【規約解説】マンション管理組合の予算はこれで完璧!管理士×経営企画の視点も紹介

管理規約解説

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管理組合における収支予算はどのような手続きを経て決まるのだろうか…?

また、

緊急対応で経費を支出する必要が出てしまったのだけれど、その場合に管理組合としてお金を使うことは可能なのだろうか…?

さらに、

収支予算を作成する際に注意すべき点とはどういう所にあるのだろうか…?

このような疑問を持っている管理組合役員も比較的多いと考えられます。

そして、収支予算は、総会の決議を経て予算化されます。

予算化されたあとに実際に経費として使えることとなりますが、予算化される前にも使える経費があることはご存じでしょうか…?

このような予算についての取り決めは、マンション標準管理規約第58条「収支予算の作成及び変更」という条文に明文化されています。

今回はこの条文とともに、国土交通省が補足すべき事項、さらにはマンション管理士であり、経営企画に所属したことがある企業の予算編成にも非常に詳しい筆者の視点から、管理組合や役員が気を付けておいた方が良い点も紹介します。

特に、収支予算の策定に悩んでいる方は必見です!標準規約第58条を理解して、最適な予算を作成しましょう。

  1. 【規約解説】マンション管理組合の予算はこれで完璧!管理士×経営企画の視点も紹介
  2. マンション標準管理規約第58条「収支予算の作成及び変更」とは?管理組合や理事会役員が知っておくべきこと
    1. 第58条「収支予算の作成及び変更」条文は?
    2. 第1項 収支予算案の承認手続き
    3. 第2項 収支予算案の変更手続き
    4. 第3項 年度開始から総会までの間に発生する経費の取り扱い
      1. 管理費で通常発生する経費
      2. 長期的な工事に掛かる費用で予算承認前の発生がやむを得ない経費
    5. 第4項 総会承認前までの経費の処理方法
    6. 第5項 応急的に修繕が必要の際の経費支出
    7. 第6項 災害等緊急時の修繕のための経費支出
  3. 第58条「収支予算の作成及び変更」の規定に対して国土交通省が指摘する補足・注意事項は?
    1. 総会決議前に使用する経費の補足説明
    2. やむを得ない事前支出管理費の考え方
    3. 二つの会計年度にまたがってしまう工事の費用
    4. 理事長の判断で支出できる経費の確認
  4. 「収支予算の作成及び変更」に対して管理組合や理事会役員が気を付けておくべき事項は?
    1. 収支予算案には来期に支出する予定の経費を見込めるだけ精査する
    2. 現時点で不確定なものも収支予算案に織り込むことを検討する
    3. 場合によっては収支予算案に予備費を入れることを考える
    4. 収支予算なので貸借対照表(BS)は不要である
    5. 月次で収支予算と実績を追っていくことが望まれる
    6. 貸借対照表から未収入金を確認する
  5. 収支予算案は織り込めるものは織り込んで検討する

【規約解説】マンション管理組合の予算はこれで完璧!管理士×経営企画の視点も紹介

今回紹介する内容は、以下の通りです。

・マンション標準管理規約第58条「収支予算の作成及び変更」とは?管理組合や理事会役員が知っておくべきこと
・第58条「収支予算の作成及び変更」の規定に対して国土交通省が指摘する補足・注意事項は?
・「収支予算の作成及び変更」に対して管理組合や理事会役員が気を付けておくべき事項は?
まず、最初の章では標準管理規約第58条の条文から「収支予算の作成及び変更」についてそのままの文面を紹介します。

続いて、この条文についての補足事項や、注意しておくべき事項について国土交通省より提示されています。

今回は、国土交通省が示している文面を、筆者が意訳せずにまずはそのまま紹介します。

その後、その文面の解説を、イメージしやすい具体的な例を踏まえながら紹介します。

そして、最後の章では第58条「収支予算の作成及び変更」の条文や補足事項を踏まえて、管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点を、マンション管理士である筆者独自の視点から具体的に紹介します。

それでは、次章より当該条文について紹介します。

マンション標準管理規約第58条「収支予算の作成及び変更」とは?管理組合や理事会役員が知っておくべきこと

まずはじめに、第58条「収支予算の作成及び変更」の条文内容について紹介します。

そして、条文に対する筆者の補足説明をします。

第58条「収支予算の作成及び変更」条文は?

条文の内容は、以下の通り定められています。

(収支予算の作成及び変更)
第58条 理事長は、毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認を得なければならない。
2 収支予算を変更しようとするときは、理事長は、その案を臨時総会に提出し、その承認を得なければならない。
3 理事長は、第56条に定める会計年度の開始後、第1項に定める承認を得るまでの間に、以下の各号に掲げる経費の支出が必要となった場合には、理事会の承認を得てその支出を行うことができる。
一 第27条に定める通常の管理に要する経費のうち、経常的であり、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるもの
二 総会の承認を得て実施している長期の施工期間を要する工事に係る経費であって、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるもの
4 前項の規定に基づき行った支出は、第1項の規定により収支予算案の承認を得たときは、当該収支予算案による支出とみなす。
5 理事会が第54条第1項第十二号の決議をした場合には、理事長は、同条第2項の決議に基づき、その支出を行うことができる。
6 理事長は、第21条第6項の規定に基づき、敷地及び共用部分等の保存行為を行う場合には、そのために必要な支出を行うことができる。

内容について、以下より各項の解説をしたいと思います。

第1項 収支予算案の承認手続き

毎年の予算については、通常総会で決議が必要となります。

第3項を除いて、この総会における予算承認がないと管理組合としては経費支出することができません。

第2項 収支予算案の変更手続き

当初立てて通常総会で承認された予算であっても、急な修繕が必要であったり等で、予算と乖離が発生する可能性があります。

その場合は、予算を改めて修正して、修正後の予算で経費支出をしていく必要があります。

予算修正する場合であっても、理事会や理事の判断では行うことができず、総会を臨時で開催し、承認を得る必要があります。

第3項 年度開始から総会までの間に発生する経費の取り扱い

事業年度開始から、通常総会の間まで、ある程度期間があります。

例えば、事業年度開始月が1月であれば、通常総会を実施するのは2月~3月が多いでしょう。

それは、前事業年度の決算を締めて、事業報告をまとめて、新たな予算を作って…という作業を行い、通常総会で全事業年度決算や当事業年度の予算を決議する必要があるためです。

その間においても、管理組合活動が行われていることから、経費の支出が発生します。

すなわち、通常総会前に必要な経費の支出が発生することとなります。

その経費については、理事会の決議において支出が可能となります。

具体的には、以下の2項目についてです。

管理費で通常発生する経費

上記の例でいえば、総会前の1~3月の間も、管理組合運営のための経費が発生します。

清掃やメンテナンスも必要ですし、管理員さんの人件費等も必要になるでしょう。

これらは、経常的ではやむを得ないものと考えられるため、予算承認前に理事会の承認を得て支出を行うことができます。

長期的な工事に掛かる費用で予算承認前の発生がやむを得ない経費

こちらもやむを得ない経費として、前年から継続的に大規模修繕工事等を実施している場合は、年度の区切りがあっても工事を継続する必要があります。

新たな事業年度に入ってからも、工事を止める訳にはいかないので、そのための経費支出もあるでしょう。

したがって、総会前に経費支出が掛かってくることもあり、この場合も理事会の決議で支出が認められることとなります。

第4項 総会承認前までの経費の処理方法

前項でやむを得ず発生してしまった経費は、のちの総会で承認された当事業年度の予算から支出されたものと考えるというものです。

逆に言えば、通常総会で提出し承認される収支予算案の中には、このやむを得ず支出した経費も当て込んで予算化する必要があります。

第5項 応急的に修繕が必要の際の経費支出

第54条第1項第十二号には、

十二 災害等により総会の開催が困難である場合における応急的な修繕工事の実施等

とあります。

理事会によって承認された場合であれば、理事長はこのための経費支出ができます。

第6項 災害等緊急時の修繕のための経費支出

第21条第6項には、

理事長は、災害等の緊急時においては、総会又は理事会の決議によらずに、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。

とあります。

前項同様に、理事会で承認された場合であれば、理事長はこのための経費支出ができます。

 

以上、第58条の条文と筆者による補足解説をしました。

次に、当該条文にも国土交通省が補足、注意すべき事項がマンション標準管理規約には掲載されていますので、次章で見ていきます。

第58条「収支予算の作成及び変更」の規定に対して国土交通省が指摘する補足・注意事項は?

第58条「収支予算の作成及び変更」の規定において、国土交通省が補足すべき内容や、注意すべき事項が5項目あります。

この章では、具体的にどのような内容を補足・注意事項として挙げているのか、全文を紹介します。

加えて、筆者の補足説明も加えます。

総会決議前に使用する経費の補足説明

まず、総会決議前に使用がやむを得ない経費についての補足説明です。

① 通常総会は、第42条第3項で新会計年度開始以後2か月以内に招集することとしているため、新会計年度開始後、予算案の承認を得るまでに一定の期間を要することが通常である。第3項及び第4項の規定は、このような期間において支出することがやむを得ない経費についての取扱いを明確化することにより、迅速かつ機動的な業務の執行を確保するものである。
なお、第4項の規定については、公益法人における実務運用を参考として、手続の簡素化・合理化を図ったものである。

また、総会前に事前に使用した経費は、その後総会で決議する収支予算に含まれるとして扱うことについて、公益法人を参考にしているとのことです。

ちなみに、通常総会についてはマンション標準管理規約には国土交通省の指摘のとおり、2か月以内の招集となります。

管理組合によっては、決算や収支予算の準備等によって、3か月以内としているところも比較的見られます。

やむを得ない事前支出管理費の考え方

どうしても毎年掛かってくる経費であり、金額としても前年度比で同額程度であることが必要であるとのことです。
② 第3項第一号に定める経費とは、第27条各号に定める経費のうち、経常的であり、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるものであることから、前年の会計年度における同経費の支出額のおよその範囲内であることが必要である。

確かに、管理費の中でも毎年掛かる管理員人件費や管理委託費、光熱費等は、固定的にほぼ同水準で発生するものでしょう。

そのため、それらについては同一の経費であり、同額程度であることが求められます。

二つの会計年度にまたがってしまう工事の費用

前章でも補足した通り、大規模修繕工事等の長期間にわたるものは、前期と当期という二期間にまたがってしまうこととなります。
③ 第3項第二号に定める経費とは、総会の承認を得て実施している工事であって、その工事の性質上、施工期間が長期となり、二つの会計年度を跨ってしまうことがやむを得ないものであり、総会の承認を得た会計年度と異なる会計年度の予算として支出する必要があるものであって、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるものであることが必要である。

そのため、総会における収支予算承認前であっても、当期の支出はやむを得ないという見解です。

一方で、支出がやむを得ないとのことから、当期に予算化してから経費支出でも問題ないものは、総会で予算承認後に経費支出をすることが望まれます。

理事長の判断で支出できる経費の確認

こちらも前章で紹介しましたが、

応急的に修繕が必要の際の経費支出

④ 第5項は、第54条第2項の決議に基づき、理事長が支出を行うことができることについて定めるものである。

ならびに、

災害等緊急時の修繕のための経費支出

⑤ 第6項は、第21条第6項の規定に基づき、災害等の緊急時において敷地及び共用部分等の保存行為を行う場合に、理事長が支出を行うことができることについて定めるものである。

についても簡単に補足しています。

 

この章では、第58条「収支予算の作成及び変更」について、国土交通省が補足する内容について紹介しました。

次の章では、これまで紹介した条文並びに国土交通省の補足を踏まえて、マンション管理士である筆者が独自の観点から、織り込むべき経費や予算と実績差異の考え方等について解説します。

「収支予算の作成及び変更」に対して管理組合や理事会役員が気を付けておくべき事項は?

そして、最後の章では、これまでの条文や国土交通省の補足を踏まえて、マンション管理士である筆者が独自の観点から、いくつか管理組合や区分所有者が気を付けておいた方が良い点について紹介します。

加えて、筆者は企業の経営企画に所属したことがあり、企業会計における予算実績管理にも精通していることから、その点からより踏み込んだ視点も紹介します。

収支予算案には来期に支出する予定の経費を見込めるだけ精査する

来期の管理組合活動の中で、とある箇所の修繕や調査等、どのような活動によって経費を支出するのか、極力見込んでいく必要があります。

必ず実施する計画にあるものは、経費が反映されていなければなりません。

もし反映されていないとなると、その活動で発生した経費が使えなくなり、場合によってはその活動自体が出来ない可能性があるため、注意が必要です。

現時点で不確定なものも収支予算案に織り込むことを検討する

また、通常総会の収支予算時には、実施するかどうか分からないような活動も考えられます。

仮に、予算に入っていなければその活動はさらに翌期になってしまいます。

そのため、やるかはどうか分からないけど、場合によっては実施する可能性があるものについては、ある程度予算化して経費を織り込んでおくことも必要です。

場合によっては収支予算案に予備費を入れることを考える

通常総会に提出する収支予算案においては、何に使うのかを明確化する観点からも、予備費として入れるよりも、具体的な費用として織り込みたいところです。

それによって通常総会で区分所有者から承認して貰う方が、「どのようなことに経費を使うのか?」が曖昧にならず、明確化されることで、透明性が生まれることが考えられます。

しかしながら、どうしても会計年度内に発生してしまう経費もあるかもしれません。

その場合に、

・使用したいけど、予算に見込んで無いから経費が使用できない…
・そのために改めて臨時総会を開くと、理事会メンバーや区分所有者にも負担が掛かる…

なども想定されそうです。

したがって、「予備費」という曖昧な予算項目も出てくることとなりますが、上記のポイントとも比較して、予備費を入れることも想定する必要があると言えます。

収支予算なので貸借対照表(BS)は不要である

決算報告においては、収支実績とともに期末時点の貸借対照表も通常総会で提示されることもあるでしょう。

しかしながら、第58条「収支予算の作成及び変更」とあるとおり、予算は収支だけで問題ありません。

すなわち、貸借対照表予算は不要ということになります。

貸借対照表の予算化は非常に精査が難しいため、また、予算化したところで毎月予算と実績の差異を追い求めるものではないことから、基本的には作成しないことが多いでしょう。

月次で収支予算と実績を追っていくことが望まれる

立案した収支予算は、毎月の数字が入っている月次ベースで細かく立案されることもあるでしょう。

その場合は、

・収入面における予算と実績、その数値差異と要因
・費用面における予算と実績、その数値差異と要因

などを確認しておくことが求められます。

なぜ数値に差異が出たのか?の要因は定性的に分析することができれば、他の役員にもイメージが沸きやすく、尚よいと考えられます。

また、差異に何が発生しているのかを明確化することで、次の手が速やかに打つことができる効果もあります。

そして、マンション標準管理規約第28条第5項で、原則区分経理をしていることになっているので、管理費と修繕積立金のそれぞれの収支計算書を確認することが必要です。

貸借対照表から未収入金を確認する

実績ベースにおいては、ある月末時点での貸借対照表を確認することができます。

その中で、未収入金という科目があり、そこで滞納状況も分かります。

とりわけ、滞納状況は区分所有者別に金額を抽出することによって、理事会の都度、毎回状況を確認することが望まれます。

収支予算案は織り込めるものは織り込んで検討する

今回は、マンション標準管理規約第58条「収支予算の作成及び変更」を紹介しました。

条文の中には、やむを得ない場合の支出については収支予算決議前に支出が可能な旨も確認できました。

一方で、収支予算立案時に、管理組合としての収入または支出の発生予定を極力織り込むことによって、数値化したい所でもあります。

管理組合活動の中で予定しているものは、織り込めるだけ織り込んで作成することも重要なポイントと言えるでしょう。

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