福岡市東区香椎浜にある「ネクサスワールド」を現地調査してきました。
ネクサスワールドは、磯崎新氏のコーディネートにより、国内外の著名建築家6名が関わった集合住宅群です。レム・コールハース、スティーブン・ホール、マーク・マック、石山修武、クリスチャン・ド・ポルザンパルク、オスカー・トゥスケ。それぞれの建築家が異なる棟を設計し、ひとつの住宅地の中で競作しています。
現地を歩くと、「これは本当に分譲マンションなのか」と感じるほど、建物ごとの個性が際立っています。赤と黄色の強い色彩、黒い石積みの外壁、凹凸のある立面、円形の屋根、赤いレンガとステンドグラス。一般的な分譲マンション像とはかなり違います。
ただし、今回見たいのは、単に「有名建築家が設計した珍しいマンション」という表面的な話だけではありません。
ネクサスワールドは、1991年から1992年にかけて竣工した集合住宅群です。すでに30年以上が経過しています。建築作品としての華やかさだけでなく、今も人が暮らす住宅として、どのように維持され、地域の住環境の中で受け継がれているのか。そこに、これからのマンション管理を考えるうえで大切な視点があります。
▼今回のコラムの全体像です(画像クリックで拡大します)

ネクサスワールドとは何か
福岡市東区香椎浜にある集合住宅群
ネクサスワールドは、福岡市東区香椎浜にある集合住宅群です。香椎浜は、周辺に団地、学校、店舗、公園などが整備された住宅地であり、その中に突然、強い個性を持った建物群が現れるような印象を受けます。
この場所を建築作品として見ることはできます。しかし同時に、ここは香椎浜という住宅地の中にある生活の場でもあります。この二面性が、ネクサスワールドを見るうえで重要なポイントです。
1991年から1992年に竣工した建築実験
ネクサスワールドは、1991年から1992年にかけて竣工しました。
竣工当時は、国内外の建築家が競作した実験的な住宅群として注目されたはずです。しかし、30年以上経った今、見るべき点は完成時の斬新さだけではありません。
完成後、人が暮らし続ける中で、建物、外構、植栽、共用部、街並みがどのように維持されてきたのか。ここに、マンション管理の視点があります。
マンションは、完成した瞬間がゴールではありません。分譲後に所有者が管理組合をつくり、修繕を重ね、合意形成を続けていくところから、本当の意味での管理が始まります。
磯崎新氏のコーディネートと6名の建築家
ネクサスワールドでは、磯崎新氏がコーディネートを行い、国内外の建築家6名が集合住宅の設計に関わりました。
参加した建築家は、レム・コールハース、スティーブン・ホール、マーク・マック、石山修武、クリスチャン・ド・ポルザンパルク、オスカー・トゥスケの6名です。
一般的な分譲マンションでは、全体の統一感や販売上の分かりやすさが重視されることが多く、複数の世界的建築家がそれぞれ強い個性を持った棟を設計するというケースは非常に珍しいものです。
公的・公団系の集合住宅では、著名建築家が関わる例もあります。しかし、ネクサスワールドは民間企業が手掛けた分譲マンションとして、建築作品性と日常の住まいが同居している点に大きな特徴があります。
分譲マンションとして見たネクサスワールドの珍しさ
世界的建築家が競作した住宅地
ネクサスワールドを現地で見ると、まず感じるのは「分譲マンションらしくない」という感覚です。
多くの分譲マンションは、住戸の配置、外観、共用部、バルコニー、窓の位置などに一定の規則性があります。それは、施工性、維持管理、居住性、販売しやすさを考えれば自然なことです。
ところが、ネクサスワールドでは、棟ごとに外観の考え方が大きく違います。
色彩で見せる棟。重厚な素材感で見せる棟。凹凸や窓の配置で見せる棟。屋根や塔のような要素で個性を出す棟。レンガやステンドグラスで印象をつくる棟。
同じ住宅地の中にありながら、建物ごとにまったく違う表情を持っています。これは、建築家の個性を前面に出した集合住宅だからこそ生まれる風景です。
建築作品性と日常の住まいが同居している
ネクサスワールドの面白さは、建築作品性と日常の住まいが同居している点にあります。
外から見れば、非常に個性的な建築群です。しかし、中では普通に人が暮らしています。エントランスを使い、共用廊下を歩き、店舗を利用し、植栽や公開空地のある環境の中で日常生活を送っています。
建築としての評価と、日常生活の場としての使いやすさ。この2つは、必ずしも同じ方向を向くとは限りません。デザイン性を高めれば、維持管理が複雑になることがあります。一方で、管理しやすさだけを優先すれば、建築としての個性は弱くなるかもしれません。
ネクサスワールドは、その両方を考えるうえで、非常に示唆的な分譲マンションです。
各棟に見る建築家たちの個性
マーク・マック棟|赤と黄色の壁面がつくる強い表情
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現地でまず目を引くのが、マーク・マック棟です。
赤と黄色を使ったカラフルな壁面が印象的で、周辺の一般的な住宅地の中ではかなり強い存在感があります。ただ、単に派手な色を使っているだけではありません。正方形や長方形など、さまざまな形の窓が壁面に配置され、建物全体にリズムを与えています。
1階部分には店舗などが入っており、住宅部分だけで完結するのではなく、街路との関係も持っています。街に対して強い表情を持つ建物と言えるでしょう。
一方で、色彩や外壁の印象が強い建物ほど、将来の修繕や更新の際には、元のデザインをどのように維持するのかという課題も出てきます。色を変えるのか、変えないのか。外壁の質感をどこまで再現するのか。店舗部分との調和をどう考えるのか。こうした点は、管理組合にとって重要なテーマになります。
レム棟・コールハース棟|重厚な外壁とガラスの対比

レム・コールハースが設計したレム棟・コールハース棟も、ネクサスワールドを代表する建物です。
この棟は、同じ建物が2棟並んでいます。1階部分はガラス張りで、店舗や施設が入っています。2階部分には、石積みの黒い外壁があり、小さな正方形の窓が等間隔に並んでいます。さらに上部には、斜めになったガラス張りの部分も見えます。
外から見ると、重厚な黒い外壁と、ガラスの軽さが対比されているように感じます。
このレム棟・コールハース棟は、1992年度の日本建築学会賞を受賞しています。建築作品として高く評価された建物であることは間違いありません。
ただし、黒い外壁、小さな窓、ガラス部分、共用廊下、半地下のように見える部分など、一般的なマンションとは異なる要素が多くあります。建築作品としての完成度が高いほど、将来の修繕では「どこまで元の設計意図を尊重するのか」という問題が出てきます。
スティーブン・ホール棟|凹凸のある立面と変則的な窓

スティーブン・ホール棟も、非常に特徴的な建物です。
外観では、凹凸のある立面や、さまざまな大きさの窓が印象に残ります。道路側から見ても、裏側から見ても、一般的なマンションの整然とした外観とは違う表情を持っています。
建物の一部には、抜けのある部分や、上階へつながる特徴的な階段も見られます。外観だけでも十分に個性的ですが、この棟で本当に興味深いのは、内部空間の考え方です。
その点は、次の章で詳しく見ていきます。
石山修武棟・ポルザンパルク棟・オスカー・トゥスケ棟

石山修武棟は、最上階部分に屋根のような突起物が等間隔に並ぶ、非常に印象的な外観です。
クリスチャン・ド・ポルザンパルク棟は、赤、黄、青の建物の一部に円形の屋根があり、ホテルのようにも見える外観です。
オスカー・トゥスケ棟は、赤いレンガの外壁とステンドグラスの窓が特徴です。
どの棟も、同じ方向を向いていません。通常であれば、これだけ異なる建物が集まると、街並みがばらばらに見えてしまう可能性があります。しかし、ネクサスワールドでは、建物単体の個性だけでなく、道路、歩道、植栽、公開空地、店舗との関係も含めて、住宅地全体の風景がつくられています。
スティーブン・ホール棟に見る「変化に対応する住まい」

Void Space / Hinged Space という考え方
スティーブン・ホール棟については、外観だけでなく、内部空間の思想にも注目する必要があります。
Steven Holl Architectsの公式資料では、この住宅について「Void Space / Hinged Space」という考え方が示されています。直訳すれば、空白の空間と、蝶番のように動く空間という意味になります。
ここで大切なのは、言葉の珍しさではありません。住まいを、固定された箱として見るのではなく、生活の変化に応じて動き、変わる空間として考えている点です。
マンションは、購入した時点の家族構成だけで使われるものではありません。子どもの成長、独立、親との同居、夫婦だけの生活、高齢期の暮らしなど、時間とともに住まい方は変化します。
その変化を、建築の側がどこまで受け止められるのか。スティーブン・ホール棟は、その問いを投げかけているように感じます。
襖の多用途性を現代的に解釈した住戸
スティーブン・ホール棟では、28戸の住戸内部が、伝統的な襖の多用途性を現代的に解釈した「Hinged Space」として構想されています。
日本の住まいでは、襖を開ければ部屋がつながり、閉めれば空間が分かれます。ひとつの空間を、昼は居間として使い、夜は寝室として使う。来客時には広げ、普段は区切る。家族構成や生活の場面に応じて、空間の使い方を変える。
このような発想を、現代の集合住宅の中に取り込もうとしたのが、スティーブン・ホール棟の大きな特徴です。
一般的な分譲マンションでは、3LDKや4LDKのように間取りが固定され、そこに家族の暮らしを合わせていくことが多いと思います。一方で、スティーブン・ホール棟の考え方は、生活の変化に応じて空間が変わるという発想です。
家族構成の変化に対応する間取り
スティーブン・ホール棟の公式資料では、昼間はリビングを広げ、夜は寝室として使うという日常的な変化が示されています。さらに、家族の変化にも対応する考え方が示されています。
子どもが成長して家を出る。高齢の親が同居する。家族の人数や関係性が変わる。そうした変化に応じて、部屋を増やしたり減らしたりできるという考え方です。
これは、長く住み続ける分譲マンションにとって重要な視点です。
マンション購入時には、今の家族構成に合わせて間取りを選びます。しかし、30年住み続ければ、家族の形は変わります。子どもが独立することもあれば、親との同居が必要になることもあります。
その意味で、住まいが変化に対応できることは、長期的な居住性に関わる重要なテーマです。
ネクサスワールドは建築作品であり、人が暮らすマンションでもある

美術館ではなく日常生活の場である
ネクサスワールドは、建築作品として見れば非常に面白い集合住宅です。しかし、忘れてはいけないのは、ここが美術館や展示施設ではなく、実際に人が暮らしている住宅だということです。
分譲マンションである以上、そこには所有者がいて、居住者がいて、管理組合があります。
外から見て面白い建物であっても、中では日常生活が営まれています。住民が出勤し、子どもが通学し、店舗が営業し、共用部が使われ、植栽が手入れされ、ゴミ置き場や駐輪場が管理されます。
建築作品としての評価と、生活の場としての管理。この2つは、切り離して考えることはできません。
個性的な外観は維持管理の対象になる
外観が個性的であればあるほど、維持管理の難しさも出てきます。
外壁の色や素材、特徴的な窓、複雑な形状の共用部、公開空地、植栽、1階店舗、歩道とのつながり。これらは、完成した時には大きな魅力になります。
しかし、時間が経てば、すべて管理や修繕の対象になります。
一般的なマンションでも、大規模修繕、給排水設備の更新、外壁補修、屋上防水、鉄部塗装、植栽管理など、長期的な維持管理は大きな課題です。
ネクサスワールドのように建物ごとの個性が強い場合には、単に「劣化したから直す」というだけでなく、建築としての表情をどのように保つのかという視点も必要になるはずです。
デザイン性と修繕性は常に両立するとは限らない
マンション管理の現場では、デザイン性と修繕性が常に同じ方向を向くとは限りません。
特徴的な外観を維持しようとすれば、通常よりも細かな仕様確認が必要になることがあります。色彩を変えないのか。素材をどう扱うのか。現代の材料や工法に置き換えるのか。元のデザインをどこまで尊重するのか。店舗や外構との関係をどう維持するのか。
こうした論点は、一般的なマンションでも起こり得ます。しかし、ネクサスワールドのように建築家の個性が強く反映されたマンションでは、より分かりやすく表面化します。
建築としての価値を守ることと、現実的な管理を行うこと。このバランスが問われるのです。
香椎浜という計画住宅地の中で見るネクサスワールド

香陵校区は計画的につくられたまち
ネクサスワールドを単体の建築作品として見るだけでは、この場所の意味は十分に見えてきません。
香陵校区地域まちづくり計画では、香陵校区について、埋立地に新しく開発されたまちであり、道路、公園、住宅などが公共や民間によって計画的につくられたことで、質の高い住環境が形成されたとされています。
つまり、香椎浜は、偶然できた住宅地ではありません。道路、公園、歩道、住宅、店舗、緑地などが組み合わさって、計画的に形成されたまちです。
ネクサスワールドも、その住環境の一部として存在しています。
どれほど個性的な建物であっても、建物単体で価値が完結するわけではありません。周辺の歩道が歩きやすいこと。緑が連続していること。公園や生活施設が近くにあること。店舗が街路ににぎわいを与えていること。こうした要素が組み合わさって、住環境が形成されます。
建物単体ではなく住環境全体で見る
マンション管理も同じです。
管理組合は、建物の中だけを見ていればよいわけではありません。自分たちのマンションが地域の中でどのような景観をつくり、どのような住環境を支えているのかを考える必要があります。
たとえば、外構や植栽が荒れていれば、マンション内部だけでなく、周辺の街並みにも影響します。駐輪場やゴミ置き場の管理が不十分であれば、通行人や近隣住民にも影響します。
マンションは、敷地の中だけで完結しているように見えて、実際には地域とつながっています。ネクサスワールドは、そのつながりが非常に見えやすいマンションです。
歩道・緑・店舗が街並みをつくる
香陵校区では、歩道、緑道、まちかど広場、店舗、植栽などが、住環境を構成する重要な要素になっています。
ネクサスワールドでも、1階店舗や歩道とのつながり、外構や植栽が建物の印象に大きく関わっています。
建物だけが優れていても、周辺の空間が荒れていれば、住環境としての魅力は保てません。反対に、歩きやすい歩道、手入れされた植栽、適切に管理された外構、にぎわいのある店舗があれば、建物の魅力は地域の中でより生きてきます。
マンションの価値は、専有部分だけで決まるわけではありません。共用部、外構、植栽、周辺環境、地域との関係が重なって、住まいとしての価値が形成されます。
開発から45年以上が経過した香陵校区の課題

少子高齢化と建替えの時期を迎える住宅地
香陵校区は、開発から45年以上が経過しています。
地域まちづくり計画では、少子高齢化の進行、都市高速道路の延伸、建替えや新規開発など、校区の住環境に大きな影響を与える変化が起こり始めていることが示されています。
計画的につくられた住宅地であっても、時間が止まるわけではありません。建物は古くなります。住民の年齢構成は変わります。店舗や施設の需要も変わります。道路や交通環境も変わります。建替えや新規開発も起こります。
つまり、まちは完成した時点がゴールではありません。むしろ、完成してから何十年も経った後に、本当の課題が見えてきます。
同じ時期に建設された中高層住宅の課題
香陵校区には、同じ時期に建設された中高層住宅が多いことも指摘されています。
同じ時期に建てられた建物が多い地域では、建物の老朽化、住民の高齢化、設備更新、修繕積立金の問題などが、同時期に表面化しやすくなります。個々のマンションだけでなく、地域全体として住環境の維持を考える必要が出てきます。
ネクサスワールドも、1991年から1992年に竣工した建物として、すでに30年以上が経過しています。当初の建築的な新しさだけでなく、今後どのように維持し、更新し、地域の中で受け継いでいくのかが問われる時期に入っています。
新規開発と既存住宅地の調和
香陵校区では、建替えや新規開発も課題になっています。
新しい建物が建つこと自体は、必ずしも悪いことではありません。むしろ、住環境が適切に更新されることは、世代を超えて住み続けられるまちにするために必要です。
しかし、新しい建物が周辺環境と調和しなければ、これまで形成されてきた住環境や景観が損なわれる可能性もあります。そのため、守り育てたい住環境や将来像、まちづくりの方向性を共有することが重要になります。
これは、管理組合にも通じる考え方です。マンションの修繕や更新でも、単に新しくするだけでは不十分です。何を守るのか。何を変えるのか。地域との関係をどう維持するのか。この視点が必要になります。
住環境は地域住民の共有財産である

豊かな緑と景観をどう維持するか
香陵校区地域まちづくり計画では、豊かな緑や優れた景観などの良好な住環境を、地域住民の共有財産として維持・向上していく考え方が示されています。
この考え方は、マンション管理にも深く関係します。
マンションの敷地、外構、植栽、外壁、共用部は、管理組合にとっての共有財産です。しかし、それは管理組合の中だけで完結するものではありません。
道路に面した外構。歩道と一体になった空間。街路樹や敷地内の植栽。1階店舗のにぎわい。まちかどの表情。夜間の照明や防犯性。これらは、周辺に住む人、通行する人、地域全体の住環境にも影響します。
つまり、マンションの管理は、単なる建物管理ではなく、地域の住環境を支える行為でもあります。
建物や外構の維持管理がまちの価値を支える
香陵校区の将来像では、建物や外構などを適切に維持管理し、更新することで、まちの価値が維持・向上し続けることが示されています。
これは、マンション管理の本質と重なります。
マンションは、外から見える建物です。外壁やバルコニー、エントランス、植栽、駐車場、駐輪場、ゴミ置き場は、地域の景観にも影響します。
管理状態の良いマンションは、周辺に安心感を与えます。反対に、外構が荒れ、植栽が放置され、共用部の管理が行き届いていないマンションは、地域の印象にも影響します。
管理組合が日々行っている管理は、自分たちの資産価値だけでなく、地域の価値にも関わっています。
特定まちづくりルールとマンション管理の接点
歩道状公開空地・壁面後退・緑の連続性
香陵校区地域まちづくり計画では、特定まちづくりルールも示されています。
そこでは、歩道状公開空地の確保、壁面の位置、高さ、緑の連続性など、住環境を維持・向上させるための視点が整理されています。
歩行者が安全に歩ける空間を確保すること。建物の圧迫感を抑えること。緑の連続性を保つこと。建物と道路の関係を整えること。
これらは、建物単体の問題ではなく、地域全体の住環境に関わる問題です。
ネクサスワールドも、建物の個性だけでなく、公開空地や植栽、歩道との関係の中で見ていく必要があります。
1階店舗とにぎわいのある街並み
香陵校区では、住宅の1階にある店舗が生活に便利であるとともに、にぎわいのある街並みをつくっていることも整理されています。
ネクサスワールドでも、1階部分に店舗や施設が入っている棟があります。店舗があることで、生活利便性が高まり、街路に人の動きが生まれます。
一方で、店舗部分があるマンションでは、管理上の論点も増えます。看板、照明、騒音、ゴミ、駐輪、営業時間、外観との調和など、住宅だけのマンションとは違う配慮が必要になります。
こうした点も、管理組合が地域との関係を考えるうえで重要なテーマです。
防犯性・交通安全・日常管理の視点
香陵校区のまちづくりでは、防犯性や交通安全も重視されています。夜間の照明、死角の少ない外構、歩行者の安全性に配慮した駐車場などは、マンション管理にも直結します。
また、ゴミ置き場、駐車場、駐輪場、自動販売機、植栽、落ち葉、外構、外壁などを適切に管理することも、快適な住環境を維持するうえで欠かせません。
これは、日常管理の積み重ねです。大規模修繕だけがマンション管理ではありません。日々の清掃、点検、植栽の手入れ、共用部の使い方、地域との関係づくりが、長期的な価値を支えています。
管理組合にとっての教訓
建物の価値は完成時だけで決まらない
ネクサスワールドから管理組合が学べることは、建物の価値は完成時だけで決まるわけではないということです。
どれほど優れた建築家が設計しても、どれほど個性的で美しい外観を持っていても、それを維持できなければ、建物の価値は時間とともに失われていきます。
反対に、特別な建築家が設計したマンションでなくても、日々の管理、適切な修繕、丁寧な合意形成、外構や植栽の維持、地域との関係づくりによって、住環境としての価値を保ち続けることはできます。
建物は、完成した瞬間がピークではありません。住まわれ、管理され、修繕され、地域の中で受け継がれていくことで、その価値が問われます。
外構・植栽・共用部も資産価値の一部である
マンション管理では、つい建物本体や修繕積立金の話に意識が向きがちです。もちろん、それは重要です。
しかし、実際には、外構、植栽、駐車場、駐輪場、ゴミ置き場、照明、歩道とのつながり、店舗や地域との関係も、マンションの価値を構成しています。
建物は、単独で存在しているわけではありません。地域の中に建ち、地域の風景をつくり、地域の住環境に影響を与えています。管理組合は、そのことを意識する必要があります。
修繕は劣化対応だけではない
修繕というと、劣化した部分を直すことだと考えられがちです。
もちろん、雨漏りを防ぐ、外壁を補修する、設備を更新する、安全性を確保することは基本です。
しかし、マンションの修繕には、それだけではない意味もあります。建物の印象をどう保つのか。住環境をどう維持するのか。地域の景観にどう関わるのか。次の世代にどのような状態で引き継ぐのか。
特にネクサスワールドのような建築的な個性の強いマンションでは、修繕は単なる機能回復ではなく、建物の価値をどう受け継ぐかという問題になります。これは、普通のマンションでも同じです。
普通のマンションにも共通する視点
普通の四角いマンションにも価値がある
ネクサスワールドは、非常に珍しい分譲マンションです。しかし、そこから得られる教訓は、普通のマンションにも共通します。
普通の四角いマンションであっても、管理のしやすさ、修繕のしやすさ、住み続けやすさという価値があります。シンプルな形状であれば、将来の大規模修繕もしやすくなります。個性的であることだけが価値ではありません。
地域の中でどのように見えているか
マンションは、地域の風景をつくります。外壁が汚れていれば、地域全体の印象に影響します。植栽が荒れていれば、街並みの質が下がります。駐輪場やゴミ置き場が乱れていれば、通行する人にも悪い印象を与えます。
管理組合は、自分たちのマンションが地域の中でどのように見えているのかを意識することが大切です。
次世代へ何を受け継ぐのか
マンション管理は、今住んでいる人だけの問題ではありません。次に住む人、将来の所有者、地域の子どもたち、周辺で生活する人たちに、どのような住環境を受け継ぐのか。
ネクサスワールドから見えてくる問いは普遍的です。自分たちのマンションは、何を守るべきなのか。何を更新するべきなのか。どのような状態で次の世代へ引き継ぐのか。この問いは、すべての管理組合に共通します。
まとめ|ネクサスワールドから考える、100年マンション時代の管理

世界的建築家による珍しい分譲マンション
ネクサスワールドは、世界的建築家が競作した、日本の分譲マンションの中でも非常に珍しい集合住宅群です。
磯崎新氏のコーディネートにより、国内外の著名建築家6名が関わり、それぞれ異なる個性を持った棟が、香椎浜の住宅地の中に配置されています。
レム棟・コールハース棟は1992年度の日本建築学会賞を受賞し、スティーブン・ホール棟には、変化に対応する住空間の思想が込められています。
30年以上経った今こそ管理の視点が重要になる
しかし、30年以上が経過した今、本当に問われているのは、建築作品としての評価だけではありません。
個性的な建物を、人が暮らす住宅として、そして地域の住環境として、どのように維持し、次世代へ受け継いでいくのか。
そこに、マンション管理の本質があります。
マンションは、建てた瞬間がゴールではありません。住まわれ、管理され、修繕され、地域の中で受け継がれていくことで、その価値が問われます。
管理組合が確認すべきこと
管理組合としては、自分たちのマンションの建物、外構、植栽、共用部、地域との関係を改めて確認することが大切です。
何を守るのか。何を更新するのか。どのような住環境を次の世代へ引き継ぐのか。
これは、ネクサスワールドのような特別なマンションだけの話ではありません。
普通のマンションであっても、管理状態は地域の景観や住環境に影響します。建物本体だけでなく、外構、植栽、共用部、歩道とのつながり、地域との関係を含めて、自分たちのマンションをどう維持していくのか。
ネクサスワールドを歩くことで、あらためてその問いを考えさせられました。


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