「持ち家なき氷河期世代 賃貸負担重く、老後に困窮リスク(日経)」の記事からマンション管理組合でも想定されることは?

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今朝の日本経済新聞に以下の記事

が紹介されていました。

具体的に日経の記事まとめとともに、それを踏まえてマンション管理組合で考えられることを、筆者の視点から見てみたいと思っています。

持ち家率低下がもたらす将来の住宅リスク ― 就職氷河期世代の現状と課題

40〜50代の持ち家率低下が深刻化

最新の住宅・土地統計調査によると、40代の持ち家率は58%、50代は65.5%と、30年前に比べて約10ポイント低下しています。特に、現在40〜50代の「就職氷河期世代」において顕著な傾向となっています。

持ち家率低下の主な要因

持ち家率が低下した背景には、以下のような要因があります。

就職氷河期による収入の低迷
1993〜2004年に社会に出た就職氷河期世代は、新卒採用の縮小により就職が困難でした。その影響で、40代〜50代になった現在も収入が伸び悩んでいます。厚生労働省のデータによると、この世代の年収増加率は他の世代よりも低い傾向にあります。

未婚率の上昇
住宅購入の大きな動機の一つである結婚ですが、40〜50代の未婚率は過去30年で大幅に上昇しました。30年前に比べると10.3〜21.5ポイントも上昇しており、経済的な不安定さが結婚の選択肢を狭めたことが影響しているようです。

住宅価格の高騰と物価上昇
2013年以降のアベノミクスの影響で不動産価格が上昇しました。国土交通省の不動産価格指数によると、戸建て住宅は約16%、マンションは2倍以上の値上がりを記録しています。さらに、近年の物価上昇が住宅購入のハードルをさらに高め、40〜50代の「持ち家を諦める層」が増えています。

住宅を持たないリスク ― 高齢期の住居問題

持ち家を持たないまま高齢期を迎えると、以下のようなリスクが生じます。

🔴 年金だけでは家賃負担が厳しくなる
就職氷河期世代は非正規雇用の期間が長かった人も多く、年金受給額が少ない可能性があります。そのため、高齢になっても賃貸住宅の家賃を支払い続けることが難しくなる恐れがあります。

🔴 生活保護受給者の増加リスク
家賃を支払えずに生活保護に頼らざるを得ない人が増える可能性があります。生活保護受給者が急増すれば、社会保障制度にも大きな影響を及ぼします。

今後求められる政策と支援策

この問題を解決するために、専門家は以下のような政策の必要性を指摘しています。

🏠 公的賃貸住宅の充実
欧州では公的賃貸住宅への支援が手厚い国もあり、日本でも賃貸住宅支援の強化が求められています。

💰 収入増加支援の継続
賃上げが進みつつある今、就職氷河期世代向けの雇用支援や賃金アップ施策を強化し、住宅取得の可能性を広げることが必要です。

📈 持ち家政策の見直し
日本はこれまで持ち家中心の住宅政策を推進してきましたが、賃貸でも安心して暮らせる仕組みづくりが今後の課題となります。

マンション管理組合に置き換えてみます

日経の記事は賃貸についての課題ですが、時代背景を考えると分譲マンションもなんらかの課題が考えられるかもしれません。

マンション管理組合に置き換えて筆者が独自で考察してみます。

マンション管理組合が直面する可能性のある課題

この状況は、マンション管理組合にとっても無関係ではありません。
今後、賃貸住まいの高齢者が増加するなかで、分譲マンションも同様な状況になる未来が予想されます。

そして、管理組合が直面する課題として以下が考えられます。

滞納リスクの増加

日経の記事では賃貸で暮らす高齢者が増え、住民の年金収入が低くなる話でしたが、分譲マンションに置き換えてみると管理費や修繕積立金の滞納リスクが高まる可能性があります。長期滞納が続けば組合の運営に影響を与えます。

住民の高齢化による管理組合運営の課題

就職氷河期世代が今後70代になると、それ以下の世代の人口が少ないことから、管理組合役員のなり手不足がさらに深刻化することが予想されます。現状でも管理組合の運営は高齢化が問題視されていますが、より深刻になる可能性も考えられます。

生活支援の必要性

そして、独居の高齢者が増えると、安否確認や生活支援がマンション管理の課題になってきます。

・高齢住民が増えることで、エレベーターのメンテナンスやバリアフリー化の必要性が高まる
・ゴミ出しのルール順守や防災対策など、管理組合の負担が増える

管理組合としてできる対策

このような状況を踏まえ、マンション管理組合として以下のような対策を検討することが重要です。

滞納リスクに備えた管理規約の整備

管理費・修繕積立金の滞納リスクに備え、マンションの管理規約を最新版にしておくことが必要です。また、滞納が発生した際の対応策を、標準管理規約の対応フロー等に合わせて事前に決めておくことが重要です。

外部専門家役員を検討

管理組合役員のなり手不足が深刻化する前に、マンション管理士等外部専門家への役員業務の委託を検討するのも一つの方法です。

高齢者向けの支援体制を構築

今後、管理組合内でも独居高齢者が増えることを想定し、

地域の自治体やNPOとの連携を強化し、安否確認や生活支援をスムーズにする
・マンション内での見守りサービスの導入を検討する
管理組合名簿の更新頻度を上げて充実させる

などが考えられます。

まとめ

日経の記事を通じて、管理組合に当てはめてみた場合に考えられることについて考察しました。

氷河期世代の持ち家率の低下が進む中で、マンション管理組合においても無関係ではいられません。将来的には、分譲マンションにおいても高齢者の増加により、管理費滞納リスクの高まりや管理組合役員のなり手不足、さらには高齢者支援の必要性が増すことが予想されます。

このような変化に対応するためには、管理組合として管理規約の整備外部専門家の活用自治体・地域との連携による高齢者支援など、早めの対策が重要です。社会全体の住宅事情が変化する中で、マンション管理の在り方も進化させることが求められています。

今後、管理組合としてどのような対応をしていくべきか、ぜひ議論を深めていきたいところです。

【記事執筆・監修】
マンション管理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古市 守
yokohama-mankan

マンション管理全般に精通し、管理規約変更、管理会社変更、管理計画認定制度の事前審査、修繕積立金の見直し、マンション関連コラムの執筆など幅広く活動。
また、企業経営、とりわけ財務・経理分野にも精通し、上場企業やベンチャー企業でCFOや管理部長を歴任。経営視点を活かし、マンション管理の実践的なサポートを提供している。

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