マンション価格の高騰が続く中で、定期借地権付きマンション、いわゆる「定借マンション」への注目が高まっています。
定借マンションとは、土地を所有するのではなく、一定期間借りた土地の上に建てられたマンションのことです。一般的な所有権マンションと比べて販売価格が抑えられることがあり、都心や人気エリアでマンションを購入する際の選択肢として検討されるケースが増えています。
新築マンション価格の高騰や供給戸数の減少を背景に、「所有権マンションは高すぎるが、定借マンションなら手が届くかもしれない」と考える一次取得者層にとって、定借マンションの存在感が高まっています。
しかし、定借マンションは単に「安く買えるマンション」ではありません。土地の所有権がないため、毎月の地代が発生します。さらに、契約期間満了時に建物を解体して更地で返還する必要がある場合には、解体準備金の積立も必要になります。管理費、修繕積立金、地代、解体準備金を合わせて考えると、購入時の価格だけでは本当の負担は分かりません。
また、定借マンションは残存期間が短くなるにつれて、売却や住宅ローンに影響が出やすくなります。とくに中古で購入する場合には、「何年住めるのか」「将来売れるのか」「相続時にどうなるのか」まで考えておく必要があります。
この記事では、定借マンションの仕組み、増加している背景、所有権マンションとの違い、地代や解体準備金などのランニングコスト、リセールリスク、購入前に確認すべきポイントを、マンション管理士の視点から整理します。
▼今回のコラムの全体像です(クリックすると拡大します)

定借マンションとは何か
定借マンションとは、定期借地権が設定された土地の上に建てられた分譲マンションのことです。正式には「定期借地権付きマンション」と呼ばれることが多く、土地を所有するのではなく、一定期間借りた土地の上に建物を建てる仕組みです。
一般的な分譲マンションでは、購入者は専有部分である住戸を所有するとともに、敷地についても共有持分を持ちます。これに対して、定借マンションでは土地は地主の所有のままであり、購入者は建物部分を所有し、土地については借地権に基づいて利用する形になります。
借地の契約期間は50年以上とされており、最近では70年程度の契約期間を設定する物件も増えています。契約期間が満了すると、原則として建物を解体し、更地にして地主に返還する必要があります。
つまり、定借マンションは「分譲マンション」でありながら、土地を永続的に所有するわけではありません。ここが、一般的な所有権マンションとの最も大きな違いです。
首都圏で定借マンションが増えている理由
定借マンションが注目されている背景には、新築マンション価格の高騰があります。
首都圏では、用地取得費、建築費、人件費の上昇などにより、新築マンション価格が高止まりしています。一般的な所有権マンションでは、土地取得費が販売価格に大きく反映されるため、都心部や人気エリアでは販売価格が高額になりやすくなっています。
一方、定借マンションでは、デベロッパーが土地を買い取るのではなく、地主から一定期間借りてマンションを建設します。そのため、土地を取得する場合と比べて、販売価格を抑えやすいという特徴があります。
地主にとっても、土地を売却せずに活用できるメリットがあります。大学、神社、企業、公益法人などが所有するまとまった土地を活用する手法として、定期借地権付きマンションが選択されることがあります。
購入者にとっては、所有権マンションでは手が届きにくい立地でも、定借マンションであれば検討できる場合があります。特に、駅近、都心部、文教地区、閑静な住宅街など、希少性の高い立地では、定借マンションが現実的な選択肢になることがあります。
2026年8月追記|2025年の供給戸数は過去最多の1,502戸
不動産経済研究所によると、2025年の首都圏における新築定借マンションの供給戸数は1,502戸となり、2008年の1,281戸を上回って過去最多となりました。
2025年の首都圏の新築分譲マンション全体の供給戸数は2万1,962戸であり、このうち定借マンションが占める割合は6.8%です。2008年には2.9%だったことから、供給戸数だけでなく、新築マンション市場全体に占める割合も大きく上昇しています。
| 項目 | 2008年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 首都圏の定借マンション供給戸数 | 1,281戸 | 1,502戸 |
| 首都圏の新築分譲マンションに占める比率 | 2.9% | 6.8% |
| 市場での位置づけ | 当時の過去最多 | 過去最多を更新 |
※2026年8月2日の日本経済新聞「手ごろな定借マンション脚光 「ババ抜き」懸念も買い替え視野に選択肢-なぜ働いても家を買えないのか㊥」をもとに筆者が作成
2024年に販売が始まった東京都文京区の定借マンションでは、周辺相場より2~3割程度安い価格が注目され、契約者の47%を30歳代が占めたと報じられています。所有権マンションには手が届きにくいものの、通勤や子育ての利便性から都心部に住みたい一次取得者層にとって、定借マンションが現実的な選択肢になっていることがうかがえます。
一方で、供給が増えているからといって、定借マンションが誰にとっても有利な商品になったわけではありません。販売価格が抑えられていても、地代、解体準備金、住宅ローン、将来の売却、契約期間満了後の更地返還という制約は残ります。入口の価格だけでなく、保有中の負担と出口まで含めて判断する必要があります。
所有権マンションと定借マンションの違い
所有権マンションと定借マンションの違いは、土地を所有するか、借りるかにあります。
一般的な所有権マンションでは、購入者は建物の専有部分を所有し、敷地についても区分所有者全員で共有します。したがって、土地と建物の両方について権利を持つことになります。
所有権マンションと定借マンションの主な違い
| 比較項目 | 所有権マンション | 定借マンション |
|---|---|---|
| 土地の権利 | 敷地の共有持分を所有する | 土地は地主から借りる |
| 建物の権利 | 専有部分を区分所有する | 専有部分を区分所有する |
| 購入価格 | 土地取得費が販売価格に含まれる | 土地を購入しないため、所有権マンションより価格を抑えられる場合がある |
| 保有中の主な費用 | 管理費、修繕積立金、住宅ローン、土地・建物の固定資産税等 | 管理費、修繕積立金、住宅ローン、地代、解体準備金、建物の固定資産税等 |
| 住宅ローン | 物件の担保価値や借入者の返済能力などにより審査される | 借地権の残存期間や金融機関の取扱方針によって、借入期間や融資条件が制限される場合がある |
| 売却 | 土地の所有権を含めて売却する | 借地権の残存期間が短くなるほど、買い手や利用できる住宅ローンが限られやすい |
| 土地の権利期限 | 土地の所有権に契約上の期限はない | 借地契約の終了時期があらかじめ定められている |
| 契約期間満了後 | 建物の維持、建替え、敷地売却などを区分所有者が検討する | 原則として建物を解体し、更地にして地主へ返還する |
※筆者独自分析により作成
定借マンションが安く見える理由
定借マンションが所有権マンションより安く見える理由は、土地を購入しない仕組みにあります。
マンション価格の中で、土地代は大きな割合を占めます。特に首都圏や都心部では、建物そのものの価格だけでなく、土地の価格が販売価格を押し上げます。所有権マンションでは、土地を取得したうえでマンションを分譲するため、その土地取得費が販売価格に反映されます。
これに対して、定借マンションでは、土地を買い取るのではなく、一定期間借りて利用します。そのため、土地取得費を販売価格に直接乗せる所有権マンションよりも、販売価格を抑えやすくなります。
購入者から見ると、「同じエリアの所有権マンションより安い」「駅近や人気エリアなのに手が届きやすい」と感じることがあります。これは定借マンションの大きなメリットです。
ただし、注意したいのは、安いのはあくまで購入時の販売価格であるという点です。定借マンションでは、購入後に地代が発生します。また、契約満了時に建物を解体して返還する場合には、解体準備金も必要になります。
さらに、一般のマンションと同じように、管理費と修繕積立金もかかります。築年数が進めば、修繕積立金が値上がりする可能性もあります。
したがって、定借マンションを検討する際には、販売価格だけで所有権マンションと比較するのではなく、購入後に支払い続ける費用を含めた総コストで判断する必要があります。
なお、マンション購入では、立地や間取り、価格だけでなく、管理費・修繕積立金・長期修繕計画などの管理面を確認することも重要です。マンション購入時に管理を見るべき理由については、以下の記事でも詳しく解説しています。
地代・解体準備金・修繕積立金という本当のランニングコスト
定借マンションを検討する際に最も注意したいのは、購入後のランニングコストです。
一般的な所有権マンションでは、毎月の主な負担は管理費、修繕積立金、住宅ローン返済です。これに加えて、固定資産税等も発生します。
一方、定借マンションでは、これらに加えて地代が発生します。土地を所有していないため、土地の固定資産税等は原則として区分所有者にはかかりませんが、その代わりに土地を利用する対価として地代を支払います。
地代の支払い方法は物件によって異なります。毎月支払う方式もあれば、契約時に一部または全部を前払いする方式、月払いと前払いを組み合わせる方式もあります。購入時には、販売価格だけでなく、地代がどのような条件で設定されているかを確認する必要があります。
さらに、定借マンションでは、契約期間満了時に建物を解体して更地で返還するため、解体準備金を積み立てることが一般的です。解体準備金は、将来の解体費用に備えるための費用であり、通常の修繕積立金とは別に負担することがあります。
仮に解体準備金が月1万円であれば、70年間で840万円になります。これは購入時には見えにくい負担ですが、長期で見ると非常に大きな金額です。
解体準備金は、分譲時に設定された金額を積み立て続ければ、必ず将来の解体費用を賄えるというものではありません。借地期間が50年、70年と長期に及ぶ間に、解体工事費や人件費、廃棄物処理費などが上昇すれば、当初の想定額では不足する可能性があります。
管理組合としては、修繕積立金と同様に、解体費用についても定期的に見積額を更新し、積立状況と将来必要額を確認する必要があります。物価や工事費の変化を反映しないまま積立を続けると、契約満了が近づいてから大幅な値上げや一時金が必要になるおそれがあります。
また、定借マンションであっても、建物を維持するための修繕積立金は必要です。共用部分の修繕、設備更新、大規模修繕工事などは、所有権マンションと同じように発生します。築年数が進めば、修繕積立金の値上げが必要になる可能性もあります。
そして、定借マンションの管理組合には、建物を契約満了まで安全に使用するための修繕計画と、最後に建物を取り壊すための解体資金計画という、二つの資金計画が必要です。
将来解体する建物であっても、契約期間中に居住者が生活している以上、給排水設備、エレベーター、外壁、防水、消防設備などの維持管理を省くことはできません。残存期間が短くなるほど、「あと何年使用する建物に、どこまで修繕費を投じるのか」という難しい判断も管理組合に求められます。
修繕積立金の基本的な考え方や、なぜ値上がりするのかについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
つまり、定借マンションの毎月負担は、管理費、修繕積立金、地代、解体準備金、住宅ローン返済を合わせて考える必要があります。購入価格が安く見えても、毎月の支出や将来の負担を含めると、所有権マンションとの差が小さくなる場合もあります。
定借マンションを検討する際には、「販売価格が安いか」ではなく、「住み続ける期間中の総支払額はいくらか」を確認することが重要です。
残存期間が短くなるとリセールに影響する
定借マンションでも、立地や市況によっては、購入時より高い価格で売却できる場合があります。特に都心部や人気エリアでは、周辺の所有権マンションの価格高騰に引っ張られ、定借マンションも中古市場で高く評価されることがあります。
ただし、定借マンションの価格を考えるうえでは、所有権マンションにはない「借地権の残存期間」を避けて通ることができません。
所有権マンションでは、敷地の共有持分である土地所有権に、契約による終了期限はありません。一方、定借マンションでは借地契約の終了時期があらかじめ定められており、時間の経過とともに残存期間が確実に短くなっていきます。
新築時や築浅時には価格の割安感や立地条件が評価されていても、残存期間が短くなるにつれて、住宅ローンの借入条件、購入できる人の範囲、中古価格、相続後の扱いなどに影響が表れやすくなります。
残存期間が短くなるほど住宅ローンと買い手が限られる
中古の定借マンションを購入する人にとって、借地権の残存期間は、その住戸を利用できる期間でもあります。残存期間が短い物件ほど、購入後に住み続けられる期間が限られるため、購入を検討する人も少なくなりやすくなります。
住宅ローンも大きな問題です。多くの金融機関では、借地権の残存期間を考慮して住宅ローンの返済期限を設定するため、残存期間が短くなるほど借入期間も短くなる傾向があります。
借入期間が短くなれば、同じ金額を借りる場合でも毎月の返済額は大きくなります。金融機関によっては定借マンションの取扱い自体を限定していることもあり、所有権マンションと比べて利用できる住宅ローンの選択肢が少なくなる場合もあります。
35年ローンを前提に住宅を購入する人にとって、残存期間が35年前後まで短くなることは、一つの節目になり得ます。ただし、実際の融資条件は金融機関、物件、購入者の収入や年齢などによって異なるため、「残存期間が35年を下回ると必ず売れなくなる」と一律に判断することはできません。
それでも、残存期間が短くなるほど、長期間の住宅ローンを利用できる買い手が減り、現金購入や短期ローンを利用できる人に購入者が限られやすくなります。買い手の範囲が狭くなれば、売却までに時間がかかったり、希望する価格で売れなかったりする可能性も高まります。
1990年代竣工物件では周辺の所有権マンションを下回る例が増加
東京カンテイが2023年に公表した調査では、定借マンションは借地期間が消費されるにつれて、中古流通時の価格が周辺の所有権マンションを下回る物件が増える傾向にあるとされています。
特に1990年代に竣工した定借マンションでは、調査対象の約8割が、周辺の所有権マンションを下回る評価となっていました。新築時や築浅時には、立地や建物の新しさ、所有権マンションとの価格差が評価されていても、残存期間が短くなるにつれて、土地を所有しないことと契約期限の影響が中古価格に表れやすくなります。
2026年8月2日付の日本経済新聞では、1994年に「首都圏初の定借マンション」として約3,000万円で分譲された横浜市内の物件が、2020年代に入り、1,000万円を下回る価格で売り出されている事例が紹介されています。
一方、同じ時期に約4,000万円で分譲された周辺の所有権マンションは、近年も3,000万円台で取引されているとされています。定借マンションでは分譲時の購入価格が低かったものの、その後の価格差が拡大した事例です。
ただし、これは特定の地域と物件を比較した個別事例であり、すべての定借マンションが同じ価格推移をたどるわけではありません。定借マンションの価格も、立地、築年数、建物の管理状態、修繕積立金の水準、周辺の住宅価格、不動産市況などによって変わります。
相続時にも残存期間が資産価値を左右する
残存期間の問題は、売却するときだけでなく、相続するときにも影響します。
定借マンションも、借地契約が存続している間は、契約条件に従って相続人が住み続けることができます。しかし、相続した時点で借地権の残存期間が短くなっていれば、その後に売却しようとしても、住宅ローンを利用できる買い手が限られ、売却が難しくなる可能性があります。
例えば、70年の定借マンションを新築で購入した場合、購入者本人にとっては十分に長い期間が残されているように見えます。しかし、購入から30年後に相続が発生すれば、残存期間は40年です。その後も相続人が住み続ければ、売却時の残存期間はさらに短くなります。
そのため、定借マンションを「子どもに残せる資産」として考える場合には、単に相続できるかどうかだけでなく、相続時点で何年の残存期間が見込まれるのかを考える必要があります。相続人がそのまま居住するのか、売却するのか、契約満了まで保有するのかによっても、判断は変わります。
所有権マンションも建物の老朽化や管理状態によって資産価値が低下するため、必ず長期的な資産として残せるわけではありません。ただし、定借マンションには建物の状態とは別に、契約期間が終了すれば原則として建物を解体し、土地を更地で返還するという期限があります。
購入者本人が生涯住めるかどうかだけではなく、配偶者や子どもが相続するときにどの程度の残存期間があるのかまで確認しておくことが重要です。
定借マンションが向いている人・向いていない人
定借マンションは、購入価格を抑えながら利便性の高い場所に住める可能性がある一方、土地を所有しないことや借地期間に期限があることなど、所有権マンションとは異なる制約があります。
そのため、単に「所有権マンションより安い」という理由だけで判断するのではなく、自分のライフプラン、住み替えの予定、相続に対する考え方、毎月の支払余力に合っているかを確認する必要があります。
定借マンションが向いている人
定借マンションが向いているのは、資産として土地を所有することよりも、現在の立地や住環境を重視する人です。
所有権マンションでは価格が高くて手が届かない駅近、都心部、文教地区、閑静な住宅街などでも、定借マンションであれば購入を検討できる場合があります。土地を所有することよりも、通勤や子育ての利便性、日々の暮らしやすさを優先する人にとっては、現実的な選択肢になり得ます。
また、住まいを永続的な資産として子どもに残すことよりも、自分たちが暮らす期間の住み心地を重視する人にも向いています。借地期間が70年程度ある新築物件であれば、購入者本人が生涯住むという観点では、十分な期間があると考えることもできます。
終の住処として長期間保有するのではなく、子育てや通勤に便利な時期だけ住み、その後に住み替えるという考え方もあります。2026年8月2日付の日本経済新聞では、新築時に購入したファーストオーナーが10年程度住み、残存期間が十分にあるうちに売却するのであれば、定借マンションも選択肢になり得るという見方が紹介されています。
ただし、「10年程度で売却すれば問題ない」と保証されているわけではありません。売却時の中古価格、金利、住宅ローンの取扱い、周辺のマンション市況、建物の管理状態、修繕積立金の水準によって、売却条件は変わります。
家族構成、勤務先、健康状態などが変化し、当初の予定より長く住む可能性もあります。住み替えを前提に購入する場合でも、希望する時期や価格で売却できなかったときに、保有を継続できる資金余力が必要です。
定借マンションが向いていない人
土地を含めた長期的な資産形成を重視する人には、定借マンションは慎重な検討が必要です。
定借マンションでは土地を所有しないため、所有権マンションと同じ感覚で、土地を含む資産として長期間保有することはできません。子どもや孫へ長期的に住まいを残したい人にとっても、契約期間満了後に原則として建物を解体し、更地で返還する仕組みは大きな制約になります。
将来の売却価格や売りやすさに確実性を求める人にも注意が必要です。残存期間が短くなるにつれて、住宅ローンを利用できる買い手が限られ、売却価格や売却までの期間に影響が出る可能性があります。
また、毎月の固定費をできる限り抑えたい人にも、必ずしも向いているとは限りません。購入価格が所有権マンションより安く見えても、管理費、修繕積立金、地代、解体準備金を合計すると、毎月の負担が重くなる場合があります。
住まいを老後の固定費として考える場合、分譲マンション、戸建て、賃貸では、それぞれ費用の発生方法が異なります。管理費、修繕積立金、固定資産税などを含めた住居費については、以下の記事でも詳しく整理しています。
購入前に確認すべきチェックポイント
定借マンションを購入する前には、通常の分譲マンション以上に確認すべき事項があります。
まず確認したいのは、借地契約の残存期間です。新築時点で何年の契約なのか、中古で購入する場合には残り何年なのかを確認します。残存期間は、将来の売却、住宅ローン、相続に大きく影響します。
次に、地代の金額と改定条件です。地代は毎月の固定費になります。現在の金額だけでなく、将来どのような条件で改定されるのかを確認する必要があります。地代が固定なのか、一定期間ごとに見直されるのか、物価や地価と連動するのかによって、将来負担は変わります。
解体準備金の有無と金額も重要です。契約満了時に建物を解体して更地返還する契約であれば、解体費用に備える必要があります。毎月いくら積み立てるのか、将来不足した場合に追加負担が発生する可能性があるのかを確認しておくべきです。
修繕積立金の水準も確認が必要です。定借マンションであっても、建物を維持するための大規模修繕は必要です。修繕積立金が低く設定されている場合、将来値上げが必要になる可能性があります。長期修繕計画と修繕積立金の見直し予定も確認すべきです。
売却時の制限も確認しておきたい点です。借地権の譲渡に地主の承諾が必要か、承諾料が発生するか、賃貸に出す場合の制限があるかなど、所有権マンションとは異なる条件が設定されている場合があります。
住宅ローンについても、金融機関の対応を事前に確認する必要があります。定借マンションは、残存期間や物件条件によって、借入期間や融資条件に影響が出る場合があります。
最後に、自分が何年住む予定なのかを考えることも重要です。定借マンションは、購入時点だけでなく、売却時点、相続時点、契約満了時点まで見通して判断する必要があります。
50〜70年で解体することへの違和感
定借マンションを考えるうえでは、建物の寿命と借地契約の期間が必ずしも一致しないことにも目を向ける必要があります。
建物が使用できる状態でも解体が原則となる
所有権マンションでは、建物を維持して住み続けるのか、建替えや敷地売却を検討するのかを、区分所有者が合意形成によって判断します。
一方、定借マンションでは、借地契約の終了時期と、その後の土地返還があらかじめ定められています。原則として、契約期間が満了すれば、建物の状態にかかわらず解体し、土地を更地にして地主へ返還することになります。
つまり、建物を技術的に使い続けられるかどうかと、契約上使い続けられるかどうかは別の問題です。定借マンションには、建物の寿命より先に契約上の期限が到来する可能性があります。
この問題は、購入者個人の損得だけではありません。建物の建設には多くの資材とエネルギーが使われ、解体時にも廃棄物や環境負荷が発生します。まだ使用できる建物を契約上の理由で取り壊すことが、都市や社会全体の持続可能性という観点から望ましいのかという論点も残ります。
借地期間の延長は将来の選択肢になり得るのか
契約期間の満了が近づいた段階で、区分所有者側と地主が協議し、借地期間を延長する事例が将来出てくるのではないかという見方もあります。
建物の状態が良好で、地主側も土地の早期返還を必要としていなければ、建物を解体せず、借地関係を継続する方が双方にとって合理的な場合も考えられます。こうした事例が積み重なれば、中古市場での評価や住宅ローンの取扱いが変化する可能性もあります。
ただし、借地期間が当然に延長される仕組みが確立しているわけではありません。定期借地権は、契約期間の満了後に土地を返還することを前提とした契約であり、区分所有者側だけで延長を決めることはできません。地主との合意に加え、地代や契約期間などの条件を改めて定める必要があります。
そのため、購入時には「将来は延長されるかもしれない」と期待するのではなく、現在の契約どおり、期間満了時に建物を解体し、更地で返還することを前提に判断すべきです。契約延長は、あくまで将来の協議によって成立する可能性がある選択肢にすぎません。
横浜マンション管理・FP研究室では、「100年続くマンション」という視点を重視しています。定借マンションは、利便性の高い場所に購入価格を抑えて住める可能性がある一方、建物を長く使い、次の世代へ引き継ぐという考え方とは緊張関係にあります。
定借マンションを選ぶ際には、自分が住む期間の利便性を優先するのか、建物を長期的に承継することを重視するのかという価値観も、購入判断の重要な基準になります。
まとめ|定借マンションは「価格」ではなく「出口」まで見て判断する
所有権マンションでは手が届きにくいエリアでも、定借マンションであれば購入を検討できる場合があります。立地や住環境を重視する人や、一定期間住んだ後に買い替えることを想定している人にとっては、大きな魅力があることも事実です。
定借マンションを検討する際には、「安く買えるか」だけでなく、「何年住むのか」「将来売るのか」「相続するのか」「契約満了時にどうなるのか」まで考える必要があります。
定借マンションは、価格ではなく、時間軸で判断するマンションです。入口の安さだけではなく、保有中の負担と出口の制約まで見たうえで、自分のライフプランに合っているかを冷静に確認することが大切です。





コメント