マンションを購入したとき、多くの方が「管理は管理会社が全部やってくれるもの」と考えるかもしれません。しかし実際には、マンションを運営している主体は、区分所有者自身で構成される「管理組合」です。たしかに、日々の清掃や設備の点検などは管理会社が担っています。
この記事では、初めてマンションを購入した方に向けて、管理組合とは何か、理事会や管理会社とはどう違うのかを、できるだけわかりやすくお伝えします。
▼今回のコラムの全体像です(画像クリックで拡大します)

マンションは「みんなで管理する建物」
マンションはひとつの建物の中に、多くの世帯が共同で暮らす住まいです。戸建て住宅と異なり、エントランスや廊下、エレベーター、屋上、駐車場といった「みんなで使う場所」が必ず存在します。これらは「共用部分」と呼ばれ、誰かが責任をもって管理しなければなりません。
共用部分を誰かが管理する必要がある
戸建て住宅であれば、庭の手入れも屋根の修繕も、すべて自分で決めて自分で対応できます。しかしマンションでは、廊下の電球ひとつ交換するにも、「誰がどのお金で、どのタイミングで」を決める仕組みが必要です。建物を健全な状態で保つためには、日常の清掃・点検はもちろん、数十年単位の大規模修繕工事まで、計画的に対応していく必要があります。
こうした共同の管理を担う仕組みとして生まれたのが、管理組合です。
▼組合員全員で管理する共用部分と、自分自身が管理する専有部分、その違いについては以下の記事が参考になります。
戸建てとマンションの管理の違い
戸建てとマンションの最大の違いは「自分だけでは決められないことがある」という点です。自分の部屋(専有部分)の内装を変えるのは自由ですが、外壁の塗装や配管の更新は、一住戸だけでできるものではありません。マンション全体で計画を立て、全員で費用を出し合い、まとめて工事を行う必要があります。
つまりマンションとは、ひとつひとつの住戸が集まった「共同で管理する建物」なのです。
そのために管理組合が存在する
マンションの区分所有者(部屋のオーナー)は、法律上、自動的に管理組合のメンバーになります。特に申し込みをする必要はなく、マンションを購入したその日から管理組合員です。これは区分所有法という法律で定められていますが、難しく考える必要はありません。
要するに「マンションのオーナー全員が、建物をみんなで管理するためのグループに入っている」ということです。
管理組合とはどんな組織?
管理組合というと、「理事会」や「管理会社」と混同されることがよくあります。しかし、これらはそれぞれ異なる役割を持っています。
管理組合・理事会・管理会社の三者関係を正しく理解することが、マンション管理を知る第一歩です。
区分所有者全員がメンバー
管理組合とは、マンションの区分所有者全員で構成される組織です。賃貸で借りている方は組合員にはなりませんが、部屋を「所有」しているオーナー全員が自動的にメンバーになります。管理組合はいわば、そのマンションのオーナー全員の集まりです。
▼分譲マンションと賃貸マンションの基本的な違いは以下の記事が参考になります。
理事会との違い
「管理組合」と「理事会」を同じものだと思っている方も多いですが、実は別の概念です。管理組合が「オーナー全員の集まり」であるのに対し、理事会は「管理組合の運営を担当する少人数のチーム」です。オーナー全員で日常の細かな運営を行うのは難しいため、代表者を選んで運営を任せています。
この代表者の集まりが「理事会」であり、選ばれた代表者が「理事」です。理事会は管理組合の一部であり、管理組合全体に代わって日々の業務を進める役割を担っています。年に一度開かれる「総会」で、重要な事項はオーナー全員によって決議されます。
管理会社との違い
管理会社は、管理組合から業務を委託された「外部の専門業者」です。日常の清掃・点検・受付対応・修繕工事の手配など、実際の作業を担うのが管理会社の役割です。管理組合が「オーナーたちの自治グループ」であるのに対し、管理会社は「プロの業者」です。
管理組合が管理会社に仕事を依頼するという関係であり、管理会社は、管理組合から依頼を受けて業務を行う立場です。あくまで、オーナーたちが自分たちのマンションを運営するために、専門業者に仕事をお願いしている構図です。
管理組合は何をしているのか
では実際に、管理組合はどんなことをしているのでしょうか。日常的な業務から将来に向けた計画まで、その活動は多岐にわたります。特に「お金の管理」と「ルール作り」は、マンションの価値を守るために非常に重要な役割を果たしています。
管理費や修繕積立金の管理
管理組合の主要な業務のひとつが、毎月オーナーから集める「管理費」と「修繕積立金」の管理です。管理費は、日常的な清掃・設備の維持・管理会社への委託費などに使われます。一方、修繕積立金は将来の大規模修繕工事(外壁の補修や屋上防水工事など)に備えて積み立てるお金です。
これらのお金は、管理組合が責任をもって管理します。どのように使うかは理事会が提案し、総会でオーナーによる議決を経て決定されます。
▼管理費の用途についてはこちらで詳しく解説していますので、ご確認ください。。
ルール作りと生活環境の維持
管理組合はマンション内のルール(管理規約)を定める権限も持っています。ペットの飼育可否、ゴミ出しのルール、共用スペースの使い方など、マンション内での生活ルールはすべてこの管理規約に基づいています。管理規約は総会でオーナー全員が議決して定めるものであり、「管理組合が決める」ということは「オーナー全員で決める」ということです。
自分たちの住まいのルールを自分たちで決められるのが、管理組合のもつ大切な機能です。
修繕工事の計画と資産価値
マンションは築年数が経つほど、さまざまな部分に劣化が生じます。外壁のひび割れ、給排水管の老朽化、エレベーターの更新など、放置すれば住環境の悪化につながります。管理組合は「長期修繕計画」を作成し、数十年先を見据えた修繕の計画と費用の積み立てを行います。
適切に修繕が行われているマンションは、住環境が良く、資産価値も維持されやすい傾向があります。管理組合がきちんと機能しているマンションは、建物の状態も維持されやすく、結果として資産価値にも差が出やすくなります。
管理組合が機能しないとどうなる?
「管理組合のことは誰かがやるだろう」「自分は忙しいから関係ない」と思っていませんか?実は、こうした無関心が積み重なると、マンション全体に深刻な影響をもたらすことがあります。
最近では、管理組合がうまく機能しなくなった「管理不全マンション」が社会問題として取り上げられることも増えています。
管理組合が機能しなくなったマンションでは、どのような問題が起きるのかを見ていきましょう。
無関心が招く「管理不全」
理事のなり手がいない、総会に誰も来ない、修繕の話し合いが進まない——これらが積み重なると、マンションは「管理不全」の状態に陥ります。管理不全のマンションでは、共用部分の清掃が行き届かず、老朽化が進み、住民同士のトラブルも増えやすくなります。さらに、適切な修繕が行われないことで建物の安全性も損なわれていきます。
「誰かがやるだろう」という意識の積み重ねが、気づけば取り返しのつかない状態を招くことがあるのです。
修繕積立金不足と老朽化
管理組合が正常に機能していないと、修繕積立金の積み立てが不十分になるケースがあります。大規模修繕工事の時期が来ても資金が足りず、工事が先延ばしになる。あるいは、急に大幅な値上げや一時金の徴収が必要になる——こうした事態は、すべてのオーナーに直接的な経済的負担をもたらします。
国土交通省のデータでも、修繕積立金が不足しているマンションは決して少なくないとされています。

※国土交通省 令和5年度マンション総合調査結果をもとに筆者が作成
早い段階から計画的に積み立て、管理組合がしっかり運営されているかを確認することが重要です。
共同運営の重要性
マンションは、1人の力で守るものではありません。すべてのオーナーが少しずつ関与することで、建物は適切に維持され、住民全員の資産価値が守られます。理事の仕事は確かに手間がかかりますが、輪番制で順番に担うことで、特定の人に負担が集中しないよう設計されているマンションも多くあります。
「管理組合に参加する」というのは義務でも罰則でもなく、自分の財産を自分たちで守るための、ごく自然な共同作業です。
まとめ:マンションは買って終わりではない
この記事を通じて、管理組合がどのような存在かがイメージできたでしょうか。改めて整理すると、次の3点がポイントです。
✅管理組合はマンションのオーナー全員で構成される組織であること
✅理事会は管理組合の日常的な運営を担う少人数のチームであること
✅管理会社は、管理組合から業務を委託された外部の専門業者であること。
この3つの関係を理解するだけで、マンション管理の全体像がぐっとクリアになります。
マンションは「買ったら終わり」の商品ではなく、住民同士で維持していく「共同運営の建物」です。建物は年月とともに老朽化し、将来の修繕や維持管理には、多くの費用と判断が必要になります。そのとき、管理組合がしっかり機能しているかどうかが、あなたの大切な資産を守ることに直結しています。
「管理組合のことは難しそう」と思わずに、まずは総会の資料を読んでみる、理事会の議事録を確認してみるだけでも、大きな一歩です。あなたが住むマンションは、あなた自身が主役の共同運営の場でもあるのです。




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