神奈川県の「築40年マンション」はどこに多い?ストックデータで見る老朽化の実態と管理組合の課題

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神奈川県は、首都圏有数のマンション集積地です。横浜・川崎という大都市を擁し、県内には100万戸を超える分譲マンションストックが存在します。その中で、築40年を超える「高経年マンション(築40年超マンション)」が全体の約23%を占めるようになりました。かつては「古い物件」と特別視されていた築40年超の区分は、今や珍しくない存在になりつつあります。

この記事では、マンション管理新聞2026年2月25日号にも掲載された、東京カンテイの2025年マンション化率のデータを整理しながら、管理組合として最低限押さえておくべき実務の論点を、できるだけ平易に整理してお伝えします。

今回使うデータ(①〜③)と読み方

本稿では、今回マンションストックの行政区別データを参照します。データは「築年帯別の戸数」「総戸数と世帯数に基づくマンション化率」「40年超ストックの戸数・割合ランキング」の三つの視点で構成されており、それぞれ①〜③として本文中に参照します。

読み方のポイントは、「絶対量(戸数)」と「相対量(割合)」を分けて見ることです。戸数が多い地域は影響範囲が広く、割合が高い地域は地域コミュニティ全体が高経年化している、という異なる意味を持ちます。どちらが「深刻」かは一概に言えませんが、それぞれ異なる政策上の課題・管理実務上の課題を示しています。

以下の①のデータ(県内全体表)をご覧ください。

①神奈川県の全マンションストックとマンション化率

行政区名 築10年以内 11〜20年 21〜30年 31〜40年 40年超 総数(A) 世帯数(B) マンション化率
横浜市 鶴見区5,6129,46411,92910,4759,43346,913145,83032.17%
横浜市 神奈川区7,1687,47110,4778,1558,41041,681129,33832.23%
横浜市 西区6,6448,6427,3525,0044,63932,28157,98255.67%
横浜市 中区7,9398,63610,5536,6968,01641,84082,05750.99%
横浜市 南区7,5394,0308,07910,4088,14438,200107,75135.45%
横浜市 保土ケ谷区2,1522,1816,7617,8056,50225,401101,47425.03%
横浜市 磯子区1,7874,4134,6185,38811,57727,78380,98534.31%
横浜市 金沢区1,6782,5846,7437,6988,87227,57592,32529.87%
横浜市 港北区6,0809,56613,78211,00311,96752,398177,28829.56%
横浜市 戸塚区3,8857,3048,8588,12210,12338,292129,19229.64%
横浜市 港南区1,3813,0956,8626,17110,44027,949101,90727.43%
横浜市 旭区6131,6444,1465,15610,24521,804115,92418.81%
横浜市 緑区1,8712,7395,9163,6657,48721,67883,47525.97%
横浜市 瀬谷区2751582,1617521,0574,40357,5117.66%
横浜市 栄区1,4711,4344,2451,0914,43212,67357,55722.02%
横浜市 泉区1101,2602,7332,0922,0738,26870,62511.71%
横浜市 青葉区3,7625,97311,8073,42110,55535,518137,64025.80%
横浜市 都筑区3,3867,1089,2154,5302,37026,60991,19529.18%
横浜市 計63,35387,702136,237107,632136,342531,2661,820,05629.19%
川崎市 川崎区9,8049,1328,3898,1205,04940,494122,82332.97%
川崎市 幸区7,5958,4035,6714,3112,88628,86685,08233.93%
川崎市 中原区9,42513,25810,7094,7423,35341,487136,94930.29%
川崎市 高津区3,2118,40710,5494,8784,87631,921116,18227.47%
川崎市 多摩区2,5482,7375,7875,4425,27421,788115,54918.86%
川崎市 宮前区3,8466,7418,8605,5029,47434,423108,20031.81%
川崎市 麻生区1,1124,8264,3812,7984,83817,95583,06021.62%
川崎市 計37,54153,50454,34635,79335,750216,934767,84528.25%
相模原市 緑区5622,0943,7322,70593810,03178,23212.82%
相模原市 中央区2,2883,5117,5458,3392,13923,822131,01018.18%
相模原市 南区2,6584,3815,9825,7999,41328,233137,19620.58%
相模原市 計5,5089,98617,25916,84312,49062,086346,43817.92%
横須賀市1,4015,06910,7899,2118,01634,486187,80318.36%
平塚市1,6932,7753,8344,2474,68517,234121,63914.17%
鎌倉市1,3762,6243,5131,5863,07612,17584,31614.44%
藤沢市5,9446,29912,0815,3928,75638,472209,51918.36%
小田原市6971,5781,2151,1831,2655,93890,0836.59%
茅ヶ崎市2,4893,5494,5503,3601,96215,910113,80713.98%
逗子市583931,6024113,0765,54027,63420.05%
三浦市2371464266571,3872,85319,48014.65%
秦野市1086819772,2372,0556,05873,9058.20%
厚木市1,6302,0864,0242,7074,89015,337105,94914.48%
大和市3,5663,2017,5266,4703,01823,781118,02420.15%
伊勢原市4752466531,7838714,02846,4398.67%
海老名市3,8301,0724,5823,4302,90515,81964,24424.62%
座間市7551,6314,0644,7712,63513,85663,16821.94%
綾瀬市45984601,1946112,40836,7906.55%
三浦郡葉山町722585423123161,50014,45110.38%
高座郡寒川町321,068201,12021,9245.11%
足柄下郡湯河原町5891431,6554602,84712,54022.70%
合計130,939184,672269,925215,057237,3671,037,9604,447,25423.34%

※参照:マンション管理新聞2026年2月25日号掲載の東京カンテイデータより筆者独自で集計

①のデータで見える県内の全体像(マンション化率と地域の性格)

県全体を俯瞰すると、2024年時点の総ストック戸数はおよそ103万8,000戸、県内の世帯数に対するマンション化率は約23.3%となっています。つまり、神奈川県ではおよそ4世帯に1世帯がマンションに居住している計算です。

ただし、この数字は地域ごとに大きな差があります。横浜市西区や中区はマンション化率が50%を超えており、都市型のマンション居住が中心となるエリアであることがわかります。一方、内陸部や郊外では10%を下回る行政区もあり、地域ごとにマンションが果たす役割は大きく異なります。

重要なのは、マンション化率が高い地域ほど、高経年化による管理不全が地域全体の生活環境に与える影響も大きくなるという点です。「自分たちの組合だけの問題」にとどまらない側面があることを念頭に置く必要があります。

▼全国のストック数や40年超のマンション戸数も紹介しています。

②「戸数(量)」で見える40年超の集中

以下の②神奈川県・築40年超のストック戸数のランキングをご覧ください。

②神奈川県・築40年超のストック戸数のランキング

順位 行政区名 築40年戸数[戸]
1横浜市港北区11,967
2横浜市磯子区11,577
3横浜市青葉区10,555
4横浜市港南区10,440
5横浜市旭区10,245
6横浜市戸塚区10,123
7川崎市宮前区9,474
8横浜市鶴見区9,433
9相模原市南区9,413
10横浜市金沢区8,872

※参照:マンション管理新聞2026年2月25日号掲載の東京カンテイデータより筆者独自で集計

戸数ランキングで特徴的なのは、横浜市港北区・磯子区・青葉区・港南区など、1970〜80年代に大規模開発が進んだ郊外住宅エリアです。これらの地区は当時、新興住宅地として多くの分譲マンションが一気に供給されました。その供給が集中した時期から40年を経た今、高経年ストックとして同時多発的に課題が顕在化しやすい構造が見て取れます。

川崎市宮前区がランキング上位(9,474戸)に入っていることも注目点です。宮前区は川崎市内でもとりわけ住宅開発が活発だったエリアであり、戸数ベースで見ると横浜市の郊外区と遜色ない規模の高経年ストックを抱えています。

こうした「量の集中」は、地域内での大規模修繕工事や建替え需要が重なる時期を生みやすく、工事会社・施工業者の供給逼迫といったマクロな問題にもつながります。一つの管理組合だけで解決できる課題ではないという意識を持つことが、今後より重要になってくるでしょう。

③「割合(濃度)」で見える40年超(街そのものの高経年化)

次に③築40年超の占める割合(各市区内の比率)のランキングをご覧ください。

③築40年超の占める割合(各市区内の比率)

行政区名 築40年超割合 県内シェア
逗子市55.5%1.3%
三浦市48.6%0.6%
横浜市旭区47.0%4.3%
横浜市磯子区41.7%4.9%
横浜市港南区37.4%4.4%
横浜市栄区35.0%1.9%
横浜市緑区34.5%3.2%
秦野市33.9%0.9%
相模原市南区33.3%4.0%
横浜市金沢区32.2%3.7%
厚木市31.9%2.1%

※参照:マンション管理新聞2026年2月25日号掲載の東京カンテイデータより筆者独自で集計

戸数ランキングとはかなり顔ぶれが変わります。逗子市(55.5%)、三浦市(48.6%)、横浜市旭区(47.0%)が上位に並び、こちらは「街全体としてのマンションストックの高経年化」が進んでいることを示しています。

逗子市や三浦市は戸数こそ少ないものの(それぞれ県内シェア1.3%、0.6%)、ストックの半数以上が既に築40年を超えており、新築供給が少ないことと相まって「更新が進みにくい」構造的特徴を持っています。管理組合の担い手不足・空き戸増加・修繕積立金の不足といった問題が、地域単位で共鳴しやすい状況です。

戸数ランキングで見えた「面的な広がり」と、割合ランキングで見えた「構造的な高経年化の深さ」は、それぞれ異なる対処の優先度を示しています。自区のマンションがどちらの性格を持つかを意識するだけでも、課題の整理の仕方が大きく変わります。

40年超マンションで起きやすい実務課題

まず「工事が難しい」という問題についてです。築40年を超えると、外壁・給排水管・エレベーター・共用部の電気設備など、多くの主要設備が更新時期を迎えます。ここで問題となるのは、これらが重なることで大規模修繕の工事費が大幅に膨らみやすいことです。

加えて、旧耐震基準(1981年以前)で建てられたマンションでは、耐震診断・改修が別途論点になる場合もあります。施工会社の見積もり取得に時間がかかるケース、仮住まいが必要な工事の調整が難航するケースも増えており、計画的な準備と余裕のあるスケジュール設定が不可欠です。

そして「会計が難しい」という問題についてです。長期修繕計画が古いまま放置されていると、積立金の不足が表面化した時点ではもう手遅れということが珍しくありません。特に1990年代以前に分譲されたマンションでは、当初の積立金設定が現在の建設コストを前提としていない場合もあるため、大幅な一時金徴収や借入が必要になるケースが見受けられます。また、居住者の高齢化・空き室増加により、管理費・積立金の未収リスクも高まります。財務の健全性を定期的に確認することが、管理組合の基本的な責務となっています。

「担い手が難しい」という問題について。居住者が高齢化するにつれて、理事のなり手が減り、管理組合の運営が特定の人に集中したり、形骸化したりするリスクが高まります。管理会社に委託している場合でも、最終的な意思決定・承認は管理組合(区分所有者)の責任です。理事会が機能しなくなると、大規模修繕の発注・契約など、重要な判断が遅延します。外部専門家(マンション管理士等)の活用など、管理組合の運営を支援する仕組みを早めに検討することも重要です。

▼神奈川県内の各自治体における管理費や修繕積立金のデータをこちらで紹介しています。

神奈川県の管理組合が最低限やること

以下の5点は、管理組合が最低限確認しておきたい実務事項です。特に高経年化が進んでいる場合は、早めの着手が効果的です。

  • 長期修繕計画の更新状況の確認:作成から5年以上が経過している場合は見直しを検討してください。現在の建設コストや設備寿命を反映した計画でなければ、積立額の根拠が失われます。
  • 修繕積立金の残高と計画のギャップ確認:現在の残高が長期計画の想定どおりかを確認します。大幅な乖離がある場合は、早めに段階的な値上げや借入計画を議論することが重要です。
  • 管理費・積立金の未収状況の把握:未収が増えている場合は、早期に督促手続きと法的対応の方針を決めておくことが組合の財務保全につながります。
  • 理事会・総会の適切な運営継続:形骸化を防ぐため、定期的な開催と議事録の保存を徹底してください。管理組合の意思決定が機能していることが、外部への信頼性にもなります。
  • 専門家・支援制度の活用検討:神奈川県や各市区町村には、マンション管理に関する相談窓口や補助制度があります。一人で抱え込まず、行政窓口やマンション管理士などの専門家への相談も積極的に検討してください。

▼長期修繕計画は5年程度毎に適時・適切に見直すことが求められます。以下のコラムで作成や、見直しのポイントを紹介しています。

築40年超マンション時代への備え

今回のデータが示したのは、「築40年超は特別な例外ではなく、これからの標準になる」という現実です。神奈川県全体で見れば、既に4戸に1戸近い割合が築40年超であり、この割合は今後さらに高まります。

大切なのは、事態が深刻化してから慌てるのではなく、平時から長期修繕計画・財務・担い手の三点を定期的に点検しておくことです。マンション管理は「誰かがやってくれる」ものではなく、区分所有者全員が関わる共同で維持していく仕組みです。データを根拠に、自分たちの組合の現状を確認することから始めてみてください。

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【記事執筆・監修】
マンション管理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古市 守
横浜マンション管理・FP研究室(研究室紹介)

マンション管理全般に精通し、管理規約変更、管理会社変更、管理計画認定制度の審査、修繕積立金の見直し、自治体相談員、コラムの執筆など、管理組合のアドバイザーとして幅広く活動。
また、上場企業やスタートアップ・ベンチャー企業のCFOや財務経理部長経験から、経営・財務経理分野にも精通。コンサルティング会社経営の傍ら、経営・財務経理視点を活かし、マンション管理の実践的サポートを行う。
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