管理組合はあるのに機能しづらいマンション|購入前に確認したい7つのチェックポイント

マンション購入

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そのマンションの「管理状況」、購入前にどこまで確認しますか?

中古マンションを検討する際、よく「管理組合がないマンション」という表現を耳にすることがありますが、区分所有法の考え方では、分譲マンションでは区分所有者全員が管理に関わる枠組みが前提になります。そのため、「管理組合が全く存在しない」ということはなく、区分所有法第3条の考え方では、2戸以上の区分所有者が存在する時点で、管理に関する団体的枠組みは当然に成立します。

中でも注意したいのは、法的な枠組みはあっても、意思決定・執行・記録のサイクルが継続的に回っていない状態(いわゆる機能不全)が長く続いているケースです。

こうした状態が続くと、将来的に、修繕の合意形成やルール運用、売却時の説明資料の整理において、確認事項が増える可能性があります。本記事では、特定物件の評価を目的とせず、購入前に確認できる資料や運用状況から、管理の実態を客観的に判断するためのチェックポイントとその読み取り方を整理します。


区分所有者が管理に関わる枠組み(法的な前提)

「管理組合がある」ことと「管理運営が円滑に行われている」ことは、実務上は分けて考える必要があります。まずは、マンション管理における組織の基本的な位置づけを整理しましょう。

管理に関わる当事者としての立場

区分所有法の考え方では、区分所有者は管理に関する枠組みの当事者となり、管理に関する責任や権限が発生します。実務上も、マンションの維持管理を継続するための前提となる組織として位置づけられます。したがって、「任意加入の団体」とは異なる性質として扱われます。

管理組合の位置づけ(何を決め、何を管理会社に委託し、何を組合側で担うか)を整理したい場合は、次の記事も参考になります。

※必要に応じて、判断材料の整理にご活用ください。

運営実態を判断するための3つの柱

管理運営が適正に行われているかを判断する際、実務的には以下の3つのサイクルが機能しているかを確認します。

  1. 意思決定: 定期総会が開催され、予算や重要議案が確定しているか。
  2. 執行と監督: 理事会等により、管理業務の遂行状況が適宜確認されているか。
  3. 記録の保管: 管理規約、議事録、会計書類などの重要書類が、次世代の所有者へ承継できる形で保管されているか。

これらのいずれかが長期にわたって滞っている場合、購入前に追加の確認事項として整理することになります。これらのサイクルは相互に独立しているものではなく、いずれかが欠けると、他のサイクルについても実態の把握や説明が難しくなる傾向があります。

そのため、個別の不足を直ちに評価するのではなく、全体としてどの情報が確認でき、どの情報が確認しづらいのかを整理する視点が求められます。


表面化しにくいが、将来的に確認事項が増え得るリスク

運営に関する意思決定・執行・記録の継続性が確認しづらい状態は、短期的には 「目立った揉め事がない」「役員の負担が少ない」ように見えることがありますが、中長期では修繕計画の実行状況などが、取引時の確認事項として扱われる可能性があります。

管理委託契約の継続に関する判断

近年、管理会社側が契約継続の条件を見直すケースも見られます。理事会や総会が成立しにくい状況が続くと、管理会社側が「意思決定の相手方が不明確」と判断し、契約継続にあたり、手続や体制の確認事項が増えることがあります。管理会社側にとって、意思決定の手続や記録が不十分な状態は、業務遂行や説明責任の面で負担が増える要因となり得るためです。

また、管理委託費の改定や業務内容の見直しが必要となった場面で、管理組合側の意思決定や合意形成が進みにくい状況が続くと、契約条件の調整が難しくなることがあります。あわせて、管理員や管理会社のフロント担当者に対するカスタマーハラスメントに該当する言動が継続的に発生している場合、現場対応の負荷や体制面について、契約継続に関する確認事項として整理されることがあります。

※必要に応じて、判断材料の整理にご活用ください。

行政による管理状況把握の枠組み

近年のマンション管理適正化法の改正により、地方自治体がマンションの管理状況を把握し、必要に応じて管理組合に対し助言・指導・勧告・命令を行う権限が整理・明確化されています。これにより、管理計画や運営体制、記録の整備状況などについて、自治体が実態を確認し、対応を求める場面が生じやすくなっています。

こうした枠組みのもと、管理状態に関して確認事項が重なる要因(計画・記録・合意形成の不足など)がある場合、自治体からの照会や指導への対応が必要となることがあります。その結果、管理状況について対外的に説明する場面が増え、将来の取引時においても、追加の確認事項として整理される可能性があります。


購入前に確認したい【運営状況を確認する7つのチェックポイント】

購入検討時の資料確認やヒアリングを通じて、運営の実態を判断するための手がかりを7つ整理します。

現場の状況から読み取れる運営状況の手がかり

現地で目に入る掲示物や共用部分の状態は、管理組合がどのように情報共有やルール運用を行っているかを推察するための、最も確認しやすい手がかりになります。具体的には以下のような2つの内容を確認すると良いでしょう。

  1. 掲示板の更新頻度が低い: 点検通知や連絡事項が長期間更新されていない場合、情報共有の仕組みが弱い可能性があります。
  2. 共用部分のルール逸脱が正されにくい: 私物の放置が続き、注意喚起や是正の痕跡が見当たらない場合、使用細則に基づく注意喚起や是正の運用履歴が確認しづらい場合があります。

これらは単体で結論を出す材料ではありませんが、複数が重なっている場合には、運営状況を整理する際の参考情報として位置づけることができます。

書類の整備状況から見る組織の透明性

管理規約や議事録、計画書といった書類は、管理組合の意思決定や運営履歴がどのように整理・共有されてきたかを確認するための基本資料になります。以下、5つの内容を紹介します。

  1. 管理規約の改定履歴が長期間ない: 社会状況の変化に対し、現在の規約運用だけでは現法に準拠していない可能性が高く、法令対応しにくくなる場合があります。
  1. 議事録の記録が極めて限定的: 議案の要点や出席状況、質疑の概要などがほとんど残っていない場合、実質的な審議や決議された対応事項が適切に行われているか判断しづらくなります。
  1. 長期修繕計画が長期間更新されていない: 現状の工事単価や劣化状況に即していない可能性があり、資金計画の妥当性について、購入検討の過程で追加の確認事項になり得ます。
  2. 滞納に対し一定の運用が見えない: 督促や回収に向けた運用の痕跡が見えない場合、将来的な資金計画について、購入検討の過程で追加の確認事項になり得ます。
  1. 役職が長期間固定されている、または責任者が不明確: 意思決定の透明性や、相互にチェックする牽制機能が働きにくくなっていることがあります。

これらの書類の更新状況や記載内容を確認することで、過去の運営経緯や現在の管理体制について、購入検討の過程で整理すべきポイントが見えてくる場合があります。


運営状況の確認事項が多い場合でも、状況を整理して判断するための視点

管理運営が停滞している可能性があっても、状況次第では正常化へ向けた動きが検討できるケースもあります。購入判断としては、以下の条件が確認できるかどうかが判断材料になります。

外部専門家の関与による論点整理

住民同士の議論だけでは解決が難しい課題も、外部専門家(マンション管理士など)の関与により、合意形成に向けた論点整理や手続設計が進む場合があります。必要に応じて、こうした専門家活用の仕組みが検討されているかを確認しておくと、判断材料になります。

このような専門家の関与がある場合、論点や選択肢が文書化され、総会や理事会での検討事項として整理されているかが一つの確認ポイントになります。あわせて、専門家の関与が一時的な助言にとどまっているのか、一定期間の支援体制として位置づけられているのかも、運営状況を把握する際の参考情報になります。

※専門家の役割や関与範囲を整理する際の参考になります。

運営方式の見直しやパートナーの刷新

役員のなり手不足など、組織構造上の課題がある場合でも、第三者管理者方式の導入が選択肢となる場合があります。ただし、導入要件や合意形成の難易度も含めて、確認事項として整理されることがあります。また、現在の停滞が管理会社との連携不足にある場合は、パートナーの見直しが改善のきっかけになることもあります。

こうした検討が行われている場合、背景となる課題や検討経緯が議事録等に整理されているかを確認することで、管理組合の意思決定プロセスを把握しやすくなります。また、管理会社の継続利用を前提としつつ、契約内容や役割分担について定期的に確認・整理する視点が管理組合内で共有されているかどうかは、運営状況を把握する一つの手がかりになります。


出口戦略:将来の売却・買い替えに備えた視点

管理の状況は、居住中には意識されにくい一方で、売却や買い替え、住宅ローン審査の場面では、第三者が物件を判断するための前提情報として確認されることがあります。管理体制や記録の整備状況は、買い主や金融機関が物件を把握する際の手がかりとなり、取引時の確認事項に影響する場合があります。

この章では、管理計画認定制度による可視化の仕組みと、融資条件や資金計画との関係について整理します。

管理計画認定制度:管理状況を可視化する仕組み

2022年に始まった「マンション管理計画認定制度」は、管理状況を一定の基準で可視化する仕組みです。この認定の有無は、買い主や金融機関が状況を把握する際の重要な手がかりとなりつつあります。管理状況の説明資料が十分でない場合、取引時に確認事項が増えることがあるため、認定の取得状況等は判断材料の一つになります。

また、認定制度は「良し悪しを判定するもの」というより、管理状況がどの程度整理・説明されているかを外部に示す指標として機能します。
認定の有無そのものよりも、なぜ取得できているのか/取得に至っていないのかを説明できる体制があるかが、購入判断の際の手がかりになります。

※必要に応じて、判断材料の一つとしてご活用ください。

融資条件と資金計画の確認

買い主の住宅ローン審査では、金融機関やローン商品によって、管理規約や長期修繕計画の提出・確認が求められることがあります。内容の整理状況によっては、追加資料の提示や確認事項が増える場合があります。

また、将来の修繕資金との整合については、修繕積立金が低水準である理由が、国のガイドラインや周辺マンションの水準、築年数に照らして説明できるか、あわせて長期修繕計画や積立金計画と整合した形で、将来不足しない設計として管理組合内で合意形成が行われているかを確認しておくと、判断材料として整理しやすくなります。


まとめ:運営の実態を「手がかり」から判断する

マンションの購入は、建物という「ハード」を取得する行為であると同時に、その維持管理を担ってきた運営の仕組みと履歴を引き継ぐ行為でもあります。そのため、表面的な築年数や立地条件だけでなく、どのような意思決定が行われ、どのように管理が運用されてきたかという点も、購入判断の前提として整理しておくことが重要になります。

  • 一般に「管理組合が全くない」かどうかより、運営の実態がどうなっているかを確認することが判断材料になる。
  • 掲示板、総会や理事会議事録、管理規約の3点は、管理状況を把握するための手がかりになる。
  • 管理の状況は、売却時やローン審査の場面で、確認対象となる項目に含まれることがある。

これらはいずれも、「良い・悪い」を即断するための基準ではなく、運営の実態を読み取るための観察点です。居住中には意識されにくい部分であっても、購入や売却、融資といった局面では、第三者が物件全体を把握するための前提情報として扱われることがあります。

もし検討中の物件で確認事項が多いと感じた場合は、結論を急ぐのではなく、契約前に「議事録」や「規約」、「計画書」を一つずつ確認し、どの点が整理されており、どの点が確認しづらいのかを言語化してみてください。その作業自体が、購入後の見通しを立てるための重要な判断材料になります。

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【記事執筆・監修】
マンション管理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古市 守
横浜マンション管理・FP研究室(研究室紹介)

マンション管理全般に精通し、管理規約変更、管理会社変更、管理計画認定制度の審査、修繕積立金の見直し、自治体相談員、コラムの執筆など、管理組合のアドバイザーとして幅広く活動。
また、上場企業やスタートアップ・ベンチャー企業のCFOや財務経理部長経験から、経営・財務経理分野にも精通。コンサルティング会社経営の傍ら、経営・財務経理視点を活かし、マンション管理の実践的サポートを行う。
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